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サーキットが存在する限りUS GPを続けるとCOTA

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2019年8月24日 « F1が2021年型マシンの風洞モデルを公開 | マルケスの挑戦状を受けて立つハミルトン »
© Clive Mason/Getty Images
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オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)がなかったら、アメリカでのF1が今頃どうなっていたかを想像することは難しい。

レース専用に作られたCOTAは2012年からUS GPを開催しており、それまで4年にわたって姿を消していたアメリカでのレースを復活させた。インディアナポリス・モータースピードウェイでの開催期間は決して成功とは言えず、F1は信用を失ったまま2007年にその地を去っていた。中でも不名誉な記憶として残るのは、安全上の問題から、スタート前のフォーメーションラップで6台を除く全てのマシンがピットレーンに戻ってしまった2005年のレースだ。その当時、多くの人々はこのマイナスイメージを払拭(ふっしょく)し、信用を取り戻すためには数十年は必要になるだろうと感じていた。

しかし、オースティンのサーキットがそれを変えた。COTAはすぐにドライバーやファンにとってお気に入りの場所となった。昨年の同サーキットの入場者数はシーズン4位であり、週末を通して26万3,160人、レースデーには11万1,580人が訪れている。契約は2021年まで結ばれており、延長についての話し合いが進んでいる。

COTA責任者のボビー・エプスタインはこの8年でCOTAが達成したものをこれでもかとアピールする。

「われわれがここにCOTAというホームを作っていなければ、F1は今頃アメリカに存在していなかったと言っても過言ではない」とエプスタインは『ESPN』に語った。「われわれがアメリカで成し得たこと、ファンベースを築くために尽力したことに目を向けてもらいたいね。それ以前はチケットの売り上げが下がり、どんなサーキットもF1のホームとして自らを確立することが難しくなっていた」

「今のような形ではなく、歴史になどなりようがないミッキーマウスタイプの市街地サーキットが多かった。インディアナポリスも同じだ――2005年を除いたとしてもあそこはF1の汚点となっており、いつまでたってもF1のホームではなくインディ500のホームだった」

「アメリカで良く見る、野球のスタジアムでサッカーの試合を開催する光景に少し似ている。大きな会場なのでファンを動員することはできるが、それはやはり野球場でしかなく、これからも野球場のままだ。本物にの良さは決してかなわない。われわれが契約するまでのF1はそういう状態だった」

契約延長にはどんな条件を望んでいるのかと尋ねると彼は述べた。「短めの契約が双方にとって良いのではないかと思う。気に入らない方向性のものに縛られたくはないからね。それに、次の数年でイベントやスポーツがどのように進化するかについても確信は持てない」

「私が言えるのは、COTAがそこにある限り、F1レースはそこで行われるだろうということだ。それが常設サーキットを作る利点だ」

エプスタインはただCOTAのためにその重要性を強調しているのではない――1つの脅威となり得る存在が地平線上に浮かび上がっている。F1はカレンダーにアメリカのレースをもう1つ加えたいと考えており、当初の計画は地元の反対で凍結されてしまったもの、今もマイアミGP確保に向けて積極的に動いている。新たに郊外のマイアミ・ドルフィンズ・スタジアム周辺を使った案が出てきたところだ。

COTAはカレンダーへの2戦目追加についてはあまり気乗りしない様子だが、それがもたらす潜在的危険を思えば理由は明らかだろう。F1スケジュールの拡大は一向にスローダウンの兆しを見せない。2019年はベトナムとオランダが追加され、過去最多の全22戦が開催される予定だ。混雑したカレンダーを組み上げるのはかなり厄介な作業だ――COTAはすでに10月から11月にかけてメキシコGPとの連戦になっている。同じ大陸で開催されるもう1つはカナダGPで、こちらはシーズン前半に組み込まれている。

初期の提案でマイアミとモントリオールが組み合わされるような記載はなかったため、マイアミが組み込まれるとすると、今あるメキシコ、オースティンの2連戦と同時期になる可能性がある。

「ヨーロッパの熱心なF1ファンが5,000万人を超え、アメリカの熱心なファンが200万人弱であることを考えるならば、レース同士で共食いさせる前にヨーロッパでのレースを増やす方が容易だと考えるのが正解だろう」とエプスタインは述べた。

「アメリカで新規ファンを生み出すポテンシャルはヨーロッパよりはるかに大きいとF1は言うが、1つのレースがもう1つのレースに及ぼすネガティブな影響もまた巨大だと言える。アメリカではカジュアルなファン層は増えているが、2カ所以上のチケットを買うのは熱心な層だ」

「どうもカレンダーの同じ時期にレースが集中しそうな気がしている。そこで1つの大きなリスクとなるのは、あるプロモーターの契約構造と別のプロモーターの構造が対立することだ――それもマーケットの近似した2つのレースとなればなおさらだ」

現在提案されているマイアミGPについてエプスタインは態度を保留し、COTAの契約交渉に際してはリスクファクターが大きな鍵になると述べた。

「われわれにとって機能するビジネスモデルと、彼らにとって機能するものとでそれほど大きな相違があるとは思わない。同じ大陸でもう1つレースが開催される影響については考慮しなければならないだろう」

「マイアミに対するわれわれの感情は、そのイベントにかかるいくらかのリスクをF1は考えるべきというものだ。市街地レースをするなら正しくしなければならない。人々が喜ぶ場所でね。ダウンタウンだとか(マイアミの)商業地域だとか、あるいはだいぶ前に彼らが言っていたニューヨークのスカイラインが見える場所だとか」

「駐車場を走り回るようなレースではそれ自体が歴史を作れるとは思えない。ファンが行きたいのは盛大なイベントだ。だから、F1がそうした議論をしていたことをしっかり覚えておく必要がある。彼らが今議論しているレースには、最初の案と同じだけのインパクトが感じられない」

COTAはここ数年、盛大なイベントにするための演出に力を入れている。2016年にはレース週末の土曜日にテイラー・スウィフトのコンサートが開かれ、これがマーケティング的に大当たりして、先行きの不安は解消された。イベントのチケットを持っていれば、レースと人気シンガーのショーを両方楽しめるというのは大きかった。以後コンサートは恒例となり、昨年はブルーノ・マーズとブリトニー・スピアーズが登場、今年はP!nkとイマジン・ドラゴンズがやってくる。

このモデルは大きな成功例となった。アメリカでの2戦目については態度を保留中のエプスタインだが、彼は新たなマーケティングの勝利に便乗しようとしている。今年の開幕前にファーストシーズンが公開され、大人気となったネットフリックスの"Formula 1: 栄光のグランプリ"シリーズだ。

「それはチケットの売り上げによって証明されている。われわれは過去最高の入場者を達成しようとしている――指定席は7月には完売してしまった。より多くのファンに対応するため、どこかに新規のグランドスタンドを作れないかと考えている」

「これには多くに理由があり、ミュージックエンターテインメントの要素を取り入れたことが大きな助けになったのも確かだ。だが、われわれがここCOTAにベースを築いたという事実は非常に大きい。われわれは良い歴史を確立し、ここでのレースを伝統にした。そこへきて、チケット販売に関してはネットフリックスのシリーズがUSファンにとって最大のブーストになっている」

「どの新規カスタマーの調査を見ても、それが巨大な影響を与え、F1にとって大きな利益となっていることが読み取れる。あれを放送したのは実に天才的なひらめきだよ。われわれはそのために週末のオファーを拡大し、イベントに違う層を引き寄せようとした。だが、ネットフリックスのシリーズはわれわれの届き得ない人々にまで枝葉を行き渡らせてくれた」

今年のUS GP決勝レースは11月3日(日)に開催される。

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