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「絶対勝て」とルクレールを鼓舞したガスリー

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2019年9月2日 « ゴール目前のアクシデントを悔やむジョビナッツィ | FIAがF2事故の調査を開始 »
© Peter J Fox/Getty Images
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ベルギーGPのスタート前、ピエール・ガスリーはシャルル・ルクレールに、自分たちの友人であるアントワーヌ・ユベールのためにF1初勝利を獲得してくれと頼んだという。ルクレールはその願いをかなえた。

有望なF2ドライバーだった22歳のユベールが8月31日(土)にレース中の事故で命を落とし、レース界に激震が走った。フランス人のユベールはガスリーやルクレールと親しく、彼らはモーターレースのジュニアランクを一緒に駆け上がってきた仲間だった。

レース中の事故によるけがでの死といえば、ルクレールが兄のように慕っていたジュール・ビアンキの名が今も思い出される。また1人、悲劇的な形で親しい人を亡くすことは耐え難いものだとガスリーは言う。

「僕はレース前にシャルルに言ったんだ。"アントワーヌのために勝ってくれ"って。僕らはみんな同じ年齢でレースを始めた――シャルル、アントワーヌと僕――。そして、アントワーヌは2005年のフレンチカップで優勝したんだ」と日曜日のレース後にガスリーは打ち明けた。

「本当に長い間一緒に戦ってきて、お互いのことをよく知っていた。数年前にジュールを失い、今度はアントワーヌだなんて、フランスのモータースポーツにとって悲し過ぎるよ。2人とも素晴らしい人たちだったんだ。本当のことだと理解するのが難しい」

レース週末はユベールにささげる1分間の黙とうで始まった。現役ドライバーたちが全員グリッド前に集まり、そこにはユベールの母と兄弟の姿もあった。

レッドブルからトロ・ロッソに変わって最初の週末を迎えていたガスリーは、マシンに乗り込んだ時には自身のキャリアの状況など遠くに行ってしまっていたと認めた。

「間違いなく今までで一番エモーショナルなレースだったと思う。22歳、23歳でこんな経験をすることになるなんて・・・」彼は述べた。「最高の仲間を1人失ったんだ。僕はカートをしていた7歳から彼らと一緒に大きくなった。僕らは同じアパートメントの同じ部屋で暮らすルームメイトだった。6年も同じ部屋で過ごし、クラスメイトでもあった。13歳から19歳まで一緒に勉強し、通っていたプライベートスクールで同じ教師に教わっていた」

「今もまだショックを受けている」とガスリーは述べた。「こんなに一瞬のことだなんて」

「ひど過ぎるよ。すでに明日、アントワーヌの共通の友人たちみんなで集まる計画を立てたんだ。昨日の出来事について、まだ誰も理解したり、実感したりできていないから」

7月までガスリーがいたレッドブルチームのクリスチャン・ホーナーもガスリーに慰めの言葉をかけている。

「昨日起きたことはわれわれの2人のドライバー(アレキサンダー・アルボンとマックス・フェルスタッペン)にとってもショックだった」と彼は述べた。「彼らはそれぞれに違うところでアントワーヌとレースをしたことがある。だが特にピエールのショックは計り知れない。彼らは確か、幼なじみのはずだ。何年も一緒にレースをし、家族同士も非常に仲が良い。さぞかしつらい思いをしていることだろう」

「私にはサポートを申し出て、声を掛けることしかできなかった。彼にはこう言ったんだ。"アントワーヌは自分が心からしたいと思ったことをしていた。君が明日レースをするF1マシンに乗る機会をもし彼が与えられたとしたら、両手でそれをつかんだはずだよ"とね。誰もがリスクというものを改めて考えた――F1だけではない。それはモータースポーツの全カテゴリー、あるいは全シングルシーターレースにつきまとうものだ」

多くのドライバーがこの状況に気持ちを完全に整理できずにいた。ユベールはルノー・スポール・アカデミーの一員であり、チーム内から高く評価されていた。今年、レッドブルから好条件で移籍し、ルノーF1チームの顔となったダニエル・リカルドは、日曜日のレースを通常通り行うのが難しかったと認めている。

あまりに感情があふれ、自分がレースをしたいとのかどうか疑問に思ったことはなかったかと聞かれ、リカルドは答えた。「昨夜はそうだった。"それだけの価値が本当にあるのか?"って自問していた」

「結局はシンプルな疑問なんだけど、すごく正直な思いでもある。それが僕らの仕事、職業であり、人生だ。でも同時にクルマをぐるぐる走らせるだけの競争でもある。だから、こういうことがあると改めて疑問が浮かぶんだ――その価値はあるのか? って」

「僕は間違いなくそれを昨夜自問した。でも眠って、今日ここで彼の家族に会ったら、僕に何よりも力を与えてくれたのがこれなんだって分かったんだよ」とリカルドは続けた。「だってあんな・・・ことがあったのにご家族が来てくれるなんてさ。帽子を脱ぐ程度じゃ足りないぐらい尊敬するよ。自分が彼らの立場になったらなんて想像もできないし、彼らは今日の僕らの誰よりも強い人たちだって感じた」

ルクレールはレースの勝利をユベールにささげ、そして、F1初勝利はほろ苦いものだったと複雑な表情を浮かべた。

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