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リバースグリッドはF1の能力主義を損なう所業とウォルフ

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2020年6月4日 « ベッテルはメルセデスの選択肢に入っているとウォルフ | メルセデス、再開前にプライベートテストを予定 »
© Peter J Fox/Getty Images
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今年の2つのF1レースで予選方式を変更しようという計画をメルセデスが阻止した理由について、チーム代表のクリスチャン・トト・ウォルフが説明した。

F1シーズンの開幕は新型コロナウイルスのパンデミックによって3カ月延期され、7月5日(日)にようやくオーストリアで始まることが決定した。スポーツの歴史上初めてレッドブル・リンクとシルバーストーンの同じサーキットで2連戦が開催されることになっている。

そこで各会場の第2ラウンドを盛り上げようと、F1は通常の予選方式に代わって、日曜日の決勝レースのグリッドを決めるために30分の予選レースを採用してはどうかと提案した。予選レースのスタート順はチャンピオンシップの逆順で決まることになっていたため、決勝で良いグリッドを得るためには上位の最速マシンたちが下から多くのライバルを抜いていく必要があった。

しかし、そうした根本的なレギュレーション変更を実施するためには全チームの同意が必要とされ、メルセデスは最初から一貫して計画を阻止する考えを明確にしていた。

「第一に、どうもF1には共通のパターンがあるようだ。すでに徹底的な分析を終えた末に却下された古いアイデアを掘り起こし、誰かがそれを素晴らしいと考え、またアジェンダに戻ってくる」とウォルフは皮肉を交えた。「すると、なぜわれわれが反対したのか、理由を聞かれることになる。そこには3つの基本的理由がある」

「私はF1を能力主義の世界だと信じている。ベストなマシンに乗ったベストな者が勝つ。フィールドをひっくり返すギミックを使ってレースを盛り上げる必要はない」

「第二に、これはツーリングカーレースの経験から知っていることなのだが、1つのレースリザルトが次のレースグリッドを決める場合、使いようによっては戦略が非常に有用なツールとなる。シュピールベルクでの最初のレースで、あるドライバーが不調だったとしよう。そこでDNF(リタイア)を選べば、そのマシンが2週目の予選レースでポールからスタートすることになる。そしてもし、そのマシンが中団勢に混ざって予選レースをポールからスタートすれば、そのドライバーは間違いなくポールで日曜日をスタートすることになり、勝つだろう。中団には必死で防御やブロックを試みるマシンがいるはずなので、後方から来るマシンにとってはDNFのリスクがより大きく、それはチャンピオンシップに影響する可能性がある」

「そして純粋なパフォーマンスの観点から、最速マシンを持つ者――必ずしもわれわれというわけではない――が2番目や3番目のチームと比べて不利な立場に置かれることになる。なぜなら単純に彼らの方が前でスタートするためだ。知っての通り、マージンはそれほど大きくはないので、一部のチームにアドバンテージを与えるというのはいささか日和見的と言わざるを得ない」

「そう、そのため、われわれは反対した。今は実験をすべきタイミングではないと意見させてもらった。興味深いことに、この提案はF1ファンのコミュニティーからも支持されていなかったものだ。調査の結果、リバースグリッドに興味を示したのはわずか15%だったことが分かっている」

リバースグリッドによる序列の入れ替えには反対したメルセデスだが、フィールドの平均化を目指した新空力テストレギュレーション(ATR)については支持している。新ルールはスライド方式でチャンピオンチームには厳しく、下位のチームほど風洞の稼働時間やCFDの利用制限を緩和するというものだ。

空力ルールを使ってフィールドを平均化するのと、予選レースでグリッドを入れ替えるのとでは何が違うのかと聞かれ、ウォルフは片方は適切な調整だが、もう一方はスポーツのDNAに野球のバットを放りこむようなものだと述べた。

「私はF1の能力主義のファンなんだ。ベストなドライバーとベストなマシンが勝つところがいい」と彼は述べた。「ずっとそうだったし、ショーのために余計なものを加えて希薄化させてしまった他のスポーツのようなギミックは今までなかった」

「私はパフォーマンスのバランス調整というものが全て嫌いだ。それは政治ゲームを招き、政治的な世界選手権にしてしまう。そんなものはF1に必要ない。新しいATRの導入は、下位ランクのチームに開発のスコープを与えることで、上位チームに少しずつ追いつける可能性を広げている。与えられるのは毎年小さなパーセンテージであり、1年で大きな違いを生むわけではないが、数年後にはフィールドの釣り合いが取れるようになる」

「たとえ1位になる強さがなくなったとしても、2位や3位になればワールドチャンピオンよりもスコープを与えられるのだから、平等な機会を得られる。それは野球のバットなどではなく、適切な調整だと思う。だがリバースグリッドは野球のバットだ」

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