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ようやく正しい軌道に乗れた気分だとマクラーレン

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2020年2月14日 « アルファロメオ・レーシングの新車が初走行 | 新車AT01を公開したアルファ・タウリ »
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マクラーレンの2020年型マシンにはフロントウイングに"A better tomorrow(より良い明日)"という宣伝文句が書かれている。チームスポンサー『BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)』のスローガンなのだが、今シーズンに向かうチームの気分とうまくマッチしているように感じられる。

新車MCL35がお披露目されたマクラーレン・テクノロジー・センター(MTC)のカンファレンス棟に足を踏み入れた時、オレンジ色のプレートに並ぶチームのドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルのリストに気付かずにいることは難しい。だが、ルイス・ハミルトンが獲得した2008年のドライバーズタイトルを除き、そこにある最近の数字はどれも1990年代後半のものだ。

MTCには強力なチームの施設にふさわしい荘厳な雰囲気があり、最新鋭の本部と過去5年間のリザルトはあまりにもちぐはぐだ。この10年はフラストレーションの連続だった。幸先よく始まったものの、勢いは急激にしぼんでしまった――最後の勝利は2012年のブラジルGPで、ジェンソン・バトンが獲得したものだ。それ以来、表彰台フィニッシュは2回しかない。実ることのないまま打ち切られたHondaとのタッグはチームのF1史でワーストの記録となり、彼らは2018年からルノーパワーへとスイッチした。

ターニングポイントが訪れたのは昨年。フェルナンド・アロンソが離脱し、カルロス・サインツとルーキーのランド・ノリスが正ドライバーに就いた。2人はすぐに仲良くなり、F1界屈指のブロマンスともささやかれるほどの人気者に。そしてチームの観点からするとそれよりも重要だったのは、2人が共にコース上で競争力を見せたことだった。特に素晴らしかったのはサインツだ。F1ベストとなったシーズンの中には大波乱のブラジルGPで獲得した初の表彰台フィニッシュも含まれている。サインツとノリスは生まれ変わったマクラーレンを象徴する存在となった。

「2人のドライバーたちには大きな賛辞を送りたい」とマクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンは新車発表会で述べた。「彼らはこのチームに多くのエネルギーをもたらしてくれた。マクラーレンは楽しい場所だ。いて楽しいガレージであり、仕事をするのが楽しいファクトリーだ」

アンドレアス・ザイドルがF1チームを率いるようになり、コース外でも安定感が高まった。ザイドルは世界耐久選手権(WEC)を支配したポルシェで監督を務めた人物だ。さらに、能力に定評あるテクニカルディレクターのジェームス・キーがトロ・ロッソから引き抜かれ、2010年代にはコンペティティブなマシンを設計することで知られていたマクラーレンの再建に着手した。

来年から大規模なレギュレーション改革が実施されるというエキサイティングな機会が待ち受ける中、この2人がマクラーレンを新時代のF1へと導くとブラウンは感じている。レギュレーションが変わるということは、全員がほぼ白紙からスタートするのと同じことを意味する。

「昨年のこの時期よりもずっといい気分だ」とチームの状態についてブラウンは述べた。「ジェームスとアンドレアスが加わったが、昨年の今頃はまだ来ていなかった。今はアンドレアスをリーダーとして、私の完全なF1チームができたと感じている。彼のような人物に私のチームを任せたいと思っていたし、ジェームスをテクニカルディレクターにと思っていた。つまり、私の役目は適所に適材を配置し、彼らに適切なリソースを与えることなんだ。われわれが改革を始めて以降、それを達成できたと考えている」

「昨年はとても良いマシンがあり、後半戦を通してさらに強くなっていった。それは全員の努力のおかげだと思っているが、アンドレアスのリーダーシップの功績は大きいと思う。マシンがコンペティティブになったことと、彼が従事し始めた時期が重なったのは偶然ではない」

「アンドレアスはF1チームの運営にどのような形を望むかについて透明性をもたらし、それが受け入れられた結果、ファクトリーやレースコースでも気持ちのいい環境が出来上がった――これが本当のチームだと感じている」

どのチームも来年のルールブックを何としてもマスターしたいと願う中で、2020年は煉獄(れんごく)のようなものかもしれないが、ブラウンはマクラーレンが上昇気流に乗り続けることに明確な利点を見いだしている。

「とてもワクワクしている。とはいえ、3位とのギャップはF1の尺度でいえばまだ非常に大きい。そのギャップを縮めようとするなら、まずは後退してはならないのだと現実的に考えねばならない。それ自体も容易なことではない。中団の争いは熾烈(しれつ)だからだ。とても満足しているが、先はまだ長いよ」

キーとしては今年のマシンの評価で自身の正当性を示したいところだろうが、むしろそれは2021年のマシンによって決まる気がする。すでに彼の関心は大きくそちらに傾いているはずだ。今年のマクラーレンは4位にとどまることさえできれば、新車発表のポジティブムードを十分に正当化することができるだろう。

チームの裏方はブラウンが掌握しているとしても、彼には表に立つ優れたリーダーがいる。新車発表に続いて行われたメディアセッションの最中にフェルナンド・アロンソへの言及はなく、2021年のドライバーラインアップについて聞くことができた時間もほんのわずかだった。誰に聞いても時期尚早との返答しか帰ってこなかったためだ。今は中団グループの先頭でチームのポジションを確保することに集中しているのだろう。

サインツは『ESPN』に対し、これは今までドライブした中のベストマシンになる予感がしていると語り、2年目を迎えるノリスからは成長ぶりがうかがえた。今後はセットアップやマシンに関して気後れせずに自分の希望をエンジニアたちに伝えるとノリスは誓っており、これは若手ドライバーにとってごく自然な曲線だ。一方ではサインツとのチーム内バトルが少しだけ激しくなるかもしれないと思わせるものもある。

サインツは今年が少し風変わりなシーズンになると認めている。現実的に言って彼が目指せる最善の場所は、2019年の"ベスト・オブ・ザ・レスト"を維持することだけだ。だが、それでも会場を包む明るいムードの中で彼は声を弾ませた。

「いい感じだ。このプロジェクトもクルマも気に入っている」とサインツは述べた。「今日こうして公開されたのを見たら、すごくまとまっている感じがいいし、去年より速いクルマだといいな。トップチームに近づけるものだとうれしい」

それから彼は、ふと現実に戻り、マクラーレンがいるアンバランスな序列を口にした。来年の今頃は遠い記憶になっていることを願っているに違いない。

「どこまでやれるかは分からない。ベストを尽くし、ポディウムのチャンスがあればそれを取りにいくし、7位以上でフィニッシュできるチャンスがあるならそれを狙うよ。でも、ポジションだけの話に限って言えば、去年を上回ることは簡単じゃない」

MTCの壁に"2020年"の文字が刻まれることはないだろうが、次の10年のうちには新たな数字が加えられるという自信を彼らは持っている。

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