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提携解消へ向かうマクラーレンとHonda

Kohei Saito
2017年9月12日 « メルセデスAMGプロジェクトONEが初お目見え | 「簡単ではつまらない」とベッテル »
© Sutton Images
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マクラーレンとHondaの苦難に満ちたパートナーシップが終わりを迎えようとしているようだ。

3年連続でHondaがマクラーレンに競争力と信頼性の低いパワーユニットしか提供できていないことから、マクラーレンとHondaの今後については疑問符が灯っていた。

マクラーレンは2015年にそれまでの長年に渡るメルセデスとの提携関係を終了し、Hondaとのパートナーシップを再開させた。両者が当初望んでいたのは、1980年代後半から1990年代前半にかけて成し遂げた常勝時代の再現だ。しかし、マクラーレンは過去2年間でそれぞれコンストラクターズ選手権9位(2015年)と6位(2016年)、今シーズンも9位と低迷している。2年半の間、マクラーレンがトップ6以内でフィニッシュしたレースは7戦しかない。

現在、F1の主要スタッフは今週末のシンガポールGPに向けてアジアへ移動中だが、マクラーレンとHondaが数日中に提携解消を公式に認める可能性を複数の情報源が示唆している。マクラーレンとHondaが提携解消を公式に認めることになれば、これは連鎖的変化をもたらす引き金となるはずだ。2018年に向けて、マクラーレンは現在ルノーのカスタマーであるトロ・ロッソとエンジン供給元を入れ替えるものと見込まれる。トロ・ロッソはルノーとの契約を早期終了させる代わりに、レッドブルがカルロス・サインツの契約をリリースし、サインツはルノーへ移籍すると言われている。

マクラーレンとHondaの提携解消の理由

苦難に満ちた最初の2年間を経て、それまでメーカーにエンジンの基本構造変更を禁じ、開発を制限するトークンシステムが撤廃されたことで2017年のHondaがメルセデスに対するギャップを埋められるのではないかと期待されていた。Hondaは2017年シーズンに向けてエンジンのパッケージングを見直して臨んだが、開幕戦オーストラリアGPではHondaが依然として4つのエンジンメーカーの中で最下位を抜け出せていない事実が明らかになった。

今年、マクラーレンはHondaに対する不満を隠しておらず、再びメルセデスにエンジン供給を依頼する可能性すらささやかれていたものの、メルセデスとフェラーリは揃ってマクラーレンへのエンジン供給プランに興味はないと否定した。Hondaはマクラーレンとのパートナーシップの早期終了について消極的であり、加えてF1首脳陣がHondaをF1に残したいとの意向を持っているため、Hondaに新たな供給先となるチームが見つからない限り、マクラーレンは提携解消へ進めない状況と見られていた。そこに現れたのがトロ・ロッソである。

つまり、マクラーレンはHondaとのフルワークス契約を捨て、レッドブルと同じくルノーのカスタマーに加わるというのだ。マクラーレンの元最高経営責任者であるロン・デニスが「現在のF1エンジン規定ではカスタマーチームが選手権を勝ち取るのは不可能」との信念に基づいてHondaと契約した経緯を考えれば、これはマクラーレンにとって皮肉な方向転換となる。

レッドブルにとってはジュニアチームであるトロ・ロッソがホンダエンジンを搭載する明白な利点があると言える。グリッドの"ビッグ4"と呼ばれるチームに注目が集まる一方で、Hondaがスポットライトの当たらぬところでエンジン問題解決に取り組めるからだ。もしホンダエンジンが競争力を高められれば、V6ターボ導入以来、ルノーに対する不満を募らせているレッドブルが将来的にHondaのワークスパートナーとなる可能性もある。とはいえ、乏しいパフォーマンスと信頼性に関する理由とは別に、マクラーレンがHondaとの提携終了を急ぐ根拠は他にもある。

まず明らかな理由はマクラーレンの現エースであるフェルナンド・アロンソの存在だ。アロンソは競争力の劣るマシンで悲惨な3シーズンを強いられている。現在のグリッドにおいてもアロンソは依然として最も成熟したドライバーと考えられており、そのキャリアのほとんどでマシンの実力以上のパフォーマンスを発揮してきた。アロンソは今年のモナコGPを欠席し、マクラーレン・ホンダとアンドレッティオートスポーツの関係を生かしてインディ500へのエントリーを許されている。これはアロンソをマクラーレンに長期残留を決断させるためのザク・ブラウン(エグゼクティブディレクター)の懐柔策だったとする見方もある。

しかし、アロンソのインディ挑戦は終盤にホンダエンジンがトラブルに見舞われたことで終わりを告げ、これを境にして2017年以降のHondaとのパートナーシップ持続可能性について語るブラウンの口調は変化した。昨年、ブラウンはマクラーレンにタイトルスポンサーを取り戻すという公約を掲げてエグゼクティブディレクターに就任した。マクラーレンは2012年に『Vodafone(ボーダフォン)』との契約が終了して以降、タイトルスポンサーを持たない状態が続いている。今シーズンの序盤戦および中盤戦におけるマクラーレン・ホンダの結果では、ブラウンが2018年までにビッグネームのスポンサーを説得する材料になるとは考えにくく、ブラウンの公約実現の可能性は低い。

インディ500の期間中には、Hondaが当初カナダとベルギーでの投入を予定していた大規模アップグレード計画に遅れが生じている事実が発覚し、マクラーレンとHondaの間の溝はさらに深まった。ベルギーで投入されたHondaのアップグレードは、予定されていたスペック4ではなく、スペック3.5もしくは3.6とされた。パフォーマンス面での明らかな向上はあったものの、マクラーレンにパートナーシップの早期終了を思いとどまらせるにはあまりにも不足しており、またあまりにも遅すぎたようだ。

意外な助け舟

マクラーレンを受け入れ、トロ・ロッソをHonda陣営に渡すというルノーの決断は相当な犠牲になると思われる。『Motorsport.com』によればルノーは2017年いっぱいでジョリオン・パーマーを放出すると見られており、供給先をトロ・ロッソからマクラーレンへ変更するにあたりインセンティブを求めているという。

そのインセンティブがカルロス・サインツだと言われており、ルノーはトロ・ロッソとの契約を早期終了させる見返りとしてサインツのルノー加入を求めているとのこと。ルノーは昨シーズンにもサインツ獲得に興味を示していたが、当時はレッドブルがサインツの契約解除を認めずに実現しなかった。サインツはすでに高い評価を確立しているものの、今シーズンはトロ・ロッソで苦戦を強いられており、かねてより希望していたレッドブルへの昇格もダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペンの長期契約によって阻まれていた。

マクラーレンがルノーエンジンに切り替えるとすればアロンソはマクラーレンに残留する可能性が高い。彼はマクラーレンに対して「Hondaをとるか、僕をとるか」と決断を迫ったことは否定したものの、アロンソは複数の発言を通してマクラーレンが2018年以降も彼を引き留めるために必要な選択は"シンプルなものだ"と暗示している。インディカーの2018年シートはここ数カ月でほぼ埋まりつつあり、アロンソが2009年以来となるルノーエンジン搭載マシンに戻ることになる公算は高い。

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