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マイク・ガスコイン独占インタビュー

Jim / Kay Tanaka
2010年2月13日 « ロータス、ニューマシンを発表! | ミシュラン、F1復帰を検討か »
ロータスでF1に復帰するマイク・ガスコイン © Sutton Images
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ロータスのテクニカルディレクターを務めるマイク・ガスコインはこの数カ月多忙を極めた、そう言っても控えめかもしれない。新たにF1チームを立ち上げ、F1マシンをたった5カ月で製造することは誰にとってもストレス過多だ。しかし、ロータスの本拠地にある彼のオフィスで働く姿を見ると、いたってリラックスしているように見える。

ガスコインはこれまでに6つのF1チームで働いてきた。1989年にマクラーレンで風洞エアロダイナミシストとして勤務したのが最初。彼の才能が実際に輝きを放ち始めたのはティレル時代、有名なデザイナーのハーベイ・ポスルスウェイトの下で活動していたころだ。その後、ザウバー、ジョーダン、ベネトン(ルノー)、トヨタを渡り歩き、後にフォース・インディアへと変ぼうするスパイカーに加入した。さまざまなことがうまくいかない中、彼の性格やマシンデザインに対して"ブルドッグ"とのニックネームと共に印象的な名声を築き上げている。2008年にフォース・インディアと袂を分かって以来、F1界から姿を消していたガスコインはセーリングに情熱をささげていたという。

そして今度はイギリスのモータースポーツ界において最も有名な名前、ロータスのもとで再びF1の世界へと戻ってきた。おそらく、海で過ごした時間がガスコインを丸くしたのだろう。ブルドッグの異名をとった荒々しさがなくなっている。

「それは明日聞いてくれ」と冗談を返すガスコイン。チームはわれわれ『ESPNF1』が訪問した翌日、マシンの初走行を実施するためシルバーストーンに向かっていた。

「下の階にいる者たちに聞けば、きっとまだ私がキレることがあると言うだろうが、それは物事が正しくできていない時だけだ」

「F1で経験したすべてのことが楽しかった。だが、同じ仕事を20年もやっていると、うんざりするものだろう。今の私は個人的に最高の場所にいる。ここロータスでのチャレンジを本当に楽しんでいる」

チャレンジとは。ロータスが2010年F1世界選手権への参戦を認められたのは2009年9月15日のことだった。わずか5カ月前のことだ。今、インタビューを行っている下の階にはF1マシンが完成しておいてある。F1に設けられた新たなグリッドのひとつを得るため、多くのチームから誘いを受けたというガスコインだが、ロータスでの機会はほぼ失いかけていたのだそうだ。

「ライトスピード(*1)から最初に接触を受けたときは真剣に受け取っていなかったんだ。わざわざ電話をかけ直すこともしなかった。Webサイトを見て、ふうん、F3チームか、支援を見いだすチャンスはないな、と思ったわけだ。彼らが2度目に電話をよこしたとき、ニーノ・ジャッジ(*2)と話したら、彼らにはF1にロータスの名前を戻すための心当たりがあると言っていた。私としては、かなりこじつけだなと思ったよ」 (*1:最初にロータスの名前をF1に戻そうという考えを示唆したF3チーム/*2:ライトスピードのチーム代表、ロータスのドライバー育成プログラムの代表も兼任)

ガスコインがロータス入りを決めたカギはトニー・フェルナンデスの存在 © Sutton Images
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最終的に、ガスコインはグリッド枠を確保するためチームと共に活動することに同意、またチームがロータスマシンを得るための時間と資金の投資に満足している様子に感銘を受けたという。間もなく、このプロジェクトにライトスピードがこれ以上かかわることは不可能だと判明したものの、そこにはまた別の後援者がいた。『Air Asia(エアアジア)』の巨頭、トニー・フェルナンデスだ。

「初めてトニー(フェルナンデス)に会ったのはイギリスGP前後だった」と振り返るガスコイン。

「新規参入組が発表された後だったが、フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション(FOTA)とFIAの間に戦争がぼっ発していた。チームが離脱するようなら、また新たにグリッド枠が空く可能性があったので、われわれは話し合いを始めたのだ。その時、トニーにはF1において2つの選択肢があった。彼はブラウンGPの買収交渉にかかわっていたが、新たなベンチャーとして私たちとの話し合いも続けていた。もちろん、FOTAとFIAの間に和解がもたらされることも考えていたよ」

ガスコインはフェルナンデスのサポートを得てプロジェクトに従事し続けたが、未熟なチームに不穏な時間が訪れる。マレーシア政府とロータスのオーナーである『Proton(プロトン)』の支援は得られていたものの、まだグリッドを確保できていなかったのだ。

「トヨタかルノー、または別のチームが撤退すれば空席ができることになる、そんなやり取りがたくさんなされていた。しかし、新シームとしては何も決まっておらず、もしもグリッドを得られたとして準備が整っているようにと決めたスケジュールも押す一方。このプロジェクトで作業しているのは私のほかに4人しかいなかったが、準備を進め、すべてのことを終わらせる必要があった」

「エントリー受理の知らせを受け取ったのは、このプロジェクトを現実のものとして進めるための最終期限、まさにその日だった。最後のチャンスだったんだ」
F1プロジェクトが消滅する瀬戸際に立っていたと明かすガスコイン

フェルナンデスはガスコインに対し、最終的にエントリーが認められるまではあまり資金を投じないようにと注意していたものの、ガスコインのアドバイスにも耳を傾けた。FIAがロータスにエントリー権を与えることを発表した頃には、チームが注ぎ込んだ資金総額は100万ポンド(約1億4,000万円)に達していたようだ。

「われわれのエントリーを認める手紙を受け取ったのは2009年9月14日、まさにその日だ。事実、マシン製作のスケジュール上、2月12日にはエンジンに火を入れたいと考えていた。実際のところは6日ほど前倒しすることができたのだが」

「いくつかの新規参入チームはエンジンの初始動日が分からないと語っているが、われわれからしてみればおかしな話さ。われわれはエントリーを提出した日から、いつ準備を行うべきか知っていたのだから。しっかりとしたチームで、しっかりとしたデザインとマシン製作スケジュールを組んでいるのであれば、そういった作業(エンジン始動など)を具体的にいつ行えばいいかわかるはずだ」

支援しながらも自由を与えてくれるチーム代表と出会うことができたガスコインは、ラッキーだったと言えよう。白紙を与えられたガスコインはシンプルな - まだ美しいとはいえないものの) - マシンに自らの誇りを盛り込んだのだ。

新生ロータス最初のマシン © Lotus
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「この仕事に20年ほど携わってきたが、そのキャリアの終盤にゼロからマシンをデザインするというこれまでとは異なった作業を行うなんて素晴らしいね。このマシンは私がデザインする最後のものにはならないと思うが、私が働くのはこのチームが最後になる。人生にはやるべきことがまだまだ待ち構えているのだからね」

「F1は私にとって退屈なものになっていた。大金を投じるチームの時代になっていたためさ。5つのビッグチームがお金を使う競争を繰り広げ、その他のチームは小さなものだった。FIAの再編によって、小さなチームでも生き残って持続できることを願うよ。ノーフォーク出身者(注:ガスコインはノーフォーク近くのノーウィッチで生まれ育った)としての挑戦とは、再びここに大きな名前を背負って戻ってくることなんだと思う。小さなチームであるという事実を気に入っているし、政治や悩み事を抱えることなく皆で働けるのはいいものだ。過去5、6年と比べても、私自身は今のほうがF1においてより楽しめていると思う」

ガスコインは経験豊富なドライバーを2人起用することを望み、フェルナンデスにリストを手渡した。結果的にロータスは新しいチームとしては珍しく、問題を抱えることなく大物ドライバーを起用することに成功する。

トゥルーリとコバライネンという2人の勝利経験者を起用 © Sutton Images
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「新しいチームでF1に挑むのはかなり難しいことなのだから、経験がないドライバーは欲しくなかった。経験のあるドライバーに対しては、物事を教える必要などないからね。トニーは早い段階からヘイキ(コバライネン)とヤルノ(トゥルーリ)に絞り、私は"もちろんボス、それは素晴らしいよ"という感じで答えたかな。しかし、新チームに来たいと願うドライバーを2人も手に入れることができるだろうか、そして彼らを雇う余裕があるだろうかという疑問もあった。しかし、私はトニーの話をあまり聞かなかったのだが、これは今後のための教訓になるかもしれないね。われわれは可能な限り最高の組み合わせを選ぶことができる立場にあり、実際にそうできたことはファンタスティックだしトニーの意図を組むこともできた。勝利経験のあるドライバー2人を起用して後方を走ることになったとしても、その理由はドライバーにあるわけではないだろう。問題はわれわれのマシンさ。そのことは私にとっても、隠すことはできない問題だ」

「ファイルーズ(ファウジー)をテストドライバーに起用することは、彼のバックグラウンドもあって常に優先的に考えられていた。彼はかなり円熟したし、マレーシア人ドライバーであるということも彼の益になっただろう。しかし、彼の戦績もその立場にふさわしいものだと思っている」

こうして新車を発表し、初めてのテストに臨むロータス。ガスコイン、フェルナンデス、そしてチームクルーにわれわれは何を期待できるのだろう? ガスコインはこう語っている。

「新規参入チームのすべてがグリッドに並ぶことを願っているよ・・・。そうすれば、少なくともわれわれの後ろに6台が並ぶことになるだろうからね。新チームの中では、われわれが最も速いと自信を持っている。そのほかのチームとの差も大きくはないだろうが、すぐに追いつく必要はある。まずは予選Q2進出を狙いたいが、その後は中団チームとして考えられるようになりたい。そこまでいけば、あとはポイント獲得目指してハードプッシュさ」

「今シーズンにおける私の哲学を示さなければならないのだとしたら、私は常にこのチームに勝利の精神を見出すことができると言えるだろう。まだ勝てるマシンを手にしてはいないだろうが、その精神は有しているのだ。それこそ、ハーベイ(故ハーベイ・ポスルズウエイト/マシンデザイナー)と共にティレルで戦った1996年に得た教訓だよ。彼は予選終了後に大きなワイングラスを抱えながら、レースで起こりうる状況にどうやって対処するか検討したものさ。15番手と16番手で予選を終えたとしても、その順位のままレースを終えることなど彼は信じようとしなかったんだ」

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