
元世界王者のニコ・ロズベルグいわく、ベルギーGPにおけるセバスチャン・ベッテルはフェラーリで最も有名なナンバー2ドライバー、ルーベンス・バリチェロのようだったという。
エンジンパワーのアドバンテージを生かしてスパ・フランコルシャン・サーキットではフロントローを独占したにもかかわらず、フェラーリで表彰台に上ったのは初優勝を遂げたシャルル・ルクレールだけだった。レースが始まってほどなくベッテルは影を潜め、ドライバー間に異なる戦略を採用することにしたフェラーリはレース中盤、ベッテルに対してルクレールに道を譲るよう指示している。
その後、ベッテルは終盤にかけて猛チャージをかけていたルイス・ハミルトン(メルセデス)を足止めさせるための重要な役割を担い、結果、わずか0.9秒しかないリードながらルクレールがハミルトンを抑えて優勝するのを支えた。3位にはもう1台のメルセデスを駆るバルテリ・ボッタスが入り、ベッテルは4位でゴールしている。
今シーズンに先だって、フェラーリ代表のマッティア・ビノットは五分五分だった場合、ベッテルがチームオーダーの恩恵を受けることになるだろうと語っており、シーズン序盤戦では4度の世界王者であるベッテルを助力するべく実行されたケースが幾度かあった。おそらく、これまでチームオーダーを使うチームとしてはフェラーリが最も有名と言えよう。有名なのは2000年から2005年にかけてミハエル・シューマッハのパートナーを務めたルーベンス・バリチェロが2番手の役目を担っていたことだ。
ロズベルグはルクレールの好調がフェラーリ内のヒエラルキーを逆転させたのではないかと考えているようで、自身のビデオブログで次のように語っている。
「ベッテルはかわいそうだったね。レースではベッテルがまるでバリチェロみたいだった。チームメイトを先に行かせて、彼を助けるだけ。素晴らしいよ、4度の世界王者なんだ。感動した。あれがベッテルにどう働くのかを見てみよう。ただ、彼がものすごく満足しているわけじゃないのは間違いないと思うよ」
「今現在、ベッテルはあのマシンに苦戦している。特にリアエンド。かなりナーバスで、リアエンドに自信がないと、マシンの力をしっかりと引き出せない」
昨年のベルギーGPを最後に表彰台の頂点に立っていないベッテルは今や1年以上も優勝から遠ざかっている。レース後、明らかにポジションを落としているときは当然、チームゲームを実行しなければならないのだと話したベッテルには、ペース不足に関する答えが見つかっていないようだ。
「(自分のレースは)チームのためのもの。最初の数周を走ってみて、自分が望むようにはタイヤをケアできないと分かったから、そこから先はチームを助けるためだけに存在していたし、実際にそうした」
「あまり長くは彼を抑えられなかった。シャルルにクッションを与えるために、彼に時間を失わせようとがんばったし、最終的には事足りたから、仕事は果たせた。自分のことをかまっていられる場所には居続けられなかったし、シャルルがいくらか時間を稼げるように道を塞ぐ役目だった」
友人のアントワーヌ・ユベールがスパのF2レースで発生した事故により亡くなった翌日、同じサーキットで感動的な勝利を遂げたルクレールは、今年、幾度となく訪れた優勝の機会をついに現実のものとした。
ロズベルグは今週末に控えるフェラーリのホームレース、モンツァが舞台のイタリアGPでもルクレールが優勝候補筆頭だとコメントしている。
「最高の仕事をしたと思う。今年の彼は本当にうまくドライビングしているし、彼のメンタル的にかなり需要な突破口になるんじゃないかな。初勝利はドライバーとしてかなりの自信になるし、きっと次のステップも踏むことになるだろう。今のマシンにかなり好感触のようだしね」
「次のレースはモンツァだ。ここも超高速コースで、フェラーリのマシンがベストだと考えられているから、ルクレールが当然、今回も優勝候補筆頭だ。きっとすごいことになるよ。モンツァにはティフォシがいるからね。どでかいパーティーになりそうだ。ちょっとした変化があるのはF1にとってもいいことだと思うよ」
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