
ロンドンの市街地でレースを開催するために投資の用意があるというバーニー・エクレストンの主張に、各方面から強い懐疑論が持ち上がっている。
F1最高責任者のコメントは、イギリスGPのスポンサー、サンタンデールがロンドンで28日(木)に行ったメディアイベントの前日に公表された。
スペインの銀行が作り上げた空想上のF1レイアウトに、突如現実味が生じたことになり、主催者とPRエージェンシー『Sidhu and Simon(シド&サイモン)』にとっては"願ってもないニュース"だと『BBC』は報じている。
『Daily Mail(デイリー・メール)』も同じ見解だ。「サンタンデールの宣伝マシンが昨夜いた場所には夢の世界があった」
「もちろん実現はしない」と幹部はコメントしている。「あなたも知っているし、私も知っている。だが、素晴らしい話じゃないか?」
一方でエクレストンの発表のタイミングに疑問を抱く者も。元銀行家ゲルハルト・グリブコウスキーが有罪判決を受けたという深刻な話題を覆い隠すにはうってつけのビッグニュースだからだ。
「実にいいアイデアだ」とロンドンGPの報道を見た『Telegraph(テレグラフ)』の読者はコメントした。「自分も確実にレースを見られるように、バーニーはウォンズワース刑務所を指名しなければいけないね」
『The National(ザ・ナショナル)』の記者ゲイリー・ミーナガンは、公表のこのタイミングは"肯定的でない話から話題をそらすのに都合がいい"とみている。
イギリスの伝説的ドライバーであるスターリング・モス卿も、レースの実現性を疑問視した。
「言いたくはないが、そう(非現実的)だろうね」と彼は言う。「私としてはぜひ見てみたいと思うが、この話は私がレースをしていた60年代から続いている」
ミーナガンは続けた。「これだけははっきりさせておこう――ロンドンでF1GPが開催されることはない」
「来年も再来年も、永遠にないだろう」
「なぜか? 市街に設けられたスピードバンプの数以上に、多くの障害が横たわっているからだ」
『CNN』はイギリスの自動車協会『AA』がすでにロンドンの有名な交通渋滞に言及し、計画を非難していると報じた。
「オリンピック中の道路封鎖による大騒動を見てきたが、これは人生に1度のこと――だが、ロンドンGPは毎年の話になる」とスポークスマンは述べた。
さらに『The Independent(インディペンデント)』紙はウエストミンスター議会が"何の相談も受けていない"としている。
まじめな報道機関でさえ、ひどく懐疑的だ。
「今のところは仮定以外の何物でもない」と『Associated Press(AP通信)』は述べ、プロジェクトは「アイデアの域を出ておらず、市の公式支援も受けていない」と付け加えた。
『Reuters(ロイター通信)』はこう記す。「それ(ロンドンGP構想)が加速し、実現することを疑う理由は数多くある」
サンタンデールの方針に逆らえないはずのジェンソン・バトンでさえ、こう発言している。「グランプリのためにロンドンを封鎖するなんてできるのかな」
イギリスの有名ブックメーカー『William Hill(ウィリアムヒル)』は、近いうちにロンドンでグランプリが開催されることはないとの見方に1/33のオッズをつけた。
「とても実現するとは思えない」とスポークスマンはコメントしている。
国外のメディアもだまされなかった。『Autosprint(オートスプリント)』はロンドンGPのアイデアについて、「Verita o folklore?(真実か作り話か?)」と問いかけた。
エクレストンのコメントを独占的に報じた『The Times(タイムズ)』でさえ、クリアしなければならない大きなハードルがあると認めている。
「サンタンデールも(中略)エクレストン氏も、正式なプロポーザルを提出するつもりはない」と同紙は述べた。
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