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  • 1977年、マクラーレン時代のテストにて

ジェームス・ハントの逸話

Laurence Edmondson / Me 2010年1月27日
コース外では仲の良かったラウダとハント。だが、激しいチャンピオン争いを演じたライバルでもある © Sutton Images
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F1ドライバーにとってのテストとは、試験前の見直しや、パワーポイントを使ったプレゼンテーションを行う前の準備に似ているかもしれない――退屈だが、成功には欠かせない作業だ。しかし、ジェームス・ハントにとってテストとは、二日酔いと切っても切れない関係だった。

1977年シーズン、序盤戦でリタイアが続いたハントと彼のチーム、マクラーレンは苦しいチャンピオンシップ防衛戦を強いられていた。チームはマシンの開発に躍起で、レースの合間には一連のテストがみっちりと組み込まれた。ハント自身は――もちろん、乗り気ではなかった。

ある日、彼は親しい友人でもあったドライバー仲間のニキ・ラウダと一緒に、ザルツブルグからテスト地のポールリカール・サーキットへ向かう飛行機を手配した。前の晩、2人は飲みに繰り出したが、ラウダはハントのハイペースについて行けず、次の日がテストだったことも考えて早めに部屋へ戻った。「とんでもない夜だったよ」とラウダは振り返る。

「酒もタバコもやりたい放題さ。ハントにはとてもかなわず、私は彼より先に寝ることにしたんだ」

翌朝の空港。滑走路の朝もやが晴れた後には、飛行機の中で1人ハントの到着を待つラウダの姿があった。離陸前の最終チェックを行っている頃、突然滑走路上にタクシーが現れ、後部座席から大きな携帯型ステレオを手に、ハントが降り立つ。後ろには、美人だが明らかにグロッキーな表情を浮かべ、真っ白なドレスに草のシミをつけたオーストリア人女性が従っていた。恋人に別れを告げたチャンピオンは、ふらつきながら飛行機に乗り込むと、席に着くやいなや寝息を立て始め、サーキットに着くまで一度も目を覚まさなかったという。

限界で当時のマクラーレンを操るジェームス・ハント © Sutton Images
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コースではテストが始まった。ラウダのフェラーリは順調なペースでタイムを刻んでいたが、トラブルが発生してしまい、ピットウオールからハントの走行を見守ることに。数ラップを走ったところで、マシンがコースから外れたことを知らせるアラームが鳴り響く。最悪の事態を恐れたラウダは叫んだ。

「クソッ! ジェームスのやつ、まだ酔っていたんだ。きっとクラッシュしたに違いない!」

救急車に飛び乗ったラウダと、マクラーレンのテディ・メイヤー代表は、救急隊員と共に現場に急行。動かないマクラーレンのマシンに近づくと、ラウダはマシンのどこにもダメージがないことに気づいた――どうやら深刻な事態は免れたようだ。ラウダとメイヤーがコックピットをのぞき込むと、シートに深く沈み込んでいるハントの姿があった。メイヤーは直ちに状況を理解し、ハントにホテルに帰って寝直すよう指示。

ここでようやくラウダは理解した。

「ジェームス――あのバカ野郎――クルマを止めて寝てやがったんだ!」

【"ジェームス・ハント― 伝記 ―"ランダム・ハウス刊より引用】

ESPNF1 ローレンス・エドモンドソン【2009年12月4日】

Laurence Edmondson is an assistant editor on ESPNF1

© ESPN Sports Media Ltd.
Laurence Edmondson Close
Laurence Edmondson is deputy editor of ESPNF1 Laurence Edmondson grew up on a Sunday afternoon diet of Ayrton Senna and Nigel Mansell and first stepped in the paddock as a Bridgestone competition finalist in 2005. He worked for ITV-F1 after graduating from university and has been ESPNF1's deputy editor since 2010