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  • 『GP Week』より、モータースポーツのコスト

特集:金持ちの世界

Naoise Holohan / Jim
2011年11月24日

モータースポーツは高額のビジネスである。頂点にたどり着くため、若きF1スターの卵たちが自己資金を持ち込むこともしばしばだ。『GP Week(GPウイーク)』より、ニーシャ・ホロハンがF1昇格までに実際にかかる費用を調査した。

1981年にフォーミュラ・フォードを制したアイルトン・セナ © Sutton Images
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フォーミュラ・フォード:10万ユーロ(約1,040万円)

歴代王者:アイルトン・セナ、ジェンソン・バトン、エディ・アーバイン

フォーミュラ・フォードはカートからシングルシーターに転向する際、最初に進む道と言える。イギリスのチャンピオンシップが最も有名ではあるが、世界中でさまざまなフォーミュラ・フォードのチャンピオンシップが行われている。マシンは1.6リッターのエンジンが搭載され、スリックのレーシングタイヤを使用。2011年シーズンはシルバーストーンやブランズハッチ、ザントフォールトなどのサーキットで8レースが催された。1年間のコストはおよそ10万ユーロ(約1,040万円)である。

フォーミュラBMW:30万ユーロ(約3,120万円)

歴代王者:セバスチャン・ベッテル、ニコ・ヒュルケンベルグ、ニコ・ロズベルグ

F1への道のりで次に進むのはフォーミュラBMWが一般的。ただ、近年はかなり縮小されている。2007年にさかのぼると、アメリカ、イギリス、アジア、ドイツでシリーズが開催されていたものの、昨年はヨーロッパとパシフィックのシリーズに規模が縮小された。その後、BMWが支援から手を引き、ドイツでフォーミュラBMWタレント・カップが運営される一方、パシフィック・シリーズはJKレーシング・アジア・シリーズとして継続されている。2010年におけるフォーミュラBMWヨーロッパのレースシートのコストはおよそ30万ユーロ(約3,120万円)だった。

フォーミュラ・ルノー2.0:35万ユーロ(約3,640万円)

歴代王者:フェリペ・マッサ、小林可夢偉、ペドロ・デ・ラ・ロサ

有名なワールド・シリーズbyルノーの一部でもあるフォーミュラ・ルノー2.0クラスはフォーミュラBMWからのわずかなステップアップにあたる。ヨーロッパを中心に、上級クラスのフォーミュラ・ルノー3.5をサポートする形でシリーズ化されたレースはほとんどのグランプリサーキットで開催される。

レッドブルの支援を受けながら、カーリン・モータースポーツと共にイギリスF3で才能を発揮したダニエル・リカルド © Sutton Images
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イギリスF3:40万ユーロ(約4,160万円)

歴代王者:ハイメ・アルグエルスアリ、ダニエル・リカルド、佐藤琢磨、ルーベンス・バリチェロ

イギリスF3は世界でも最も長く続いているジュニアカテゴリーであり、初めてシーズンが行われたのは1951年のこと。以来、世界中にさまざまなF3シリーズが誕生した。近年ではGP2やGP3、ルノー・ワールド・シリーズなどが開花したこともあり、F3やイギリスF3の重要性が低くなっているとはいえ、アルグエルスアリやリカルド、ジャン-エリック・ベルヌを輩出した同シリーズは疑いようもなく高い信用性を誇っている。

F2:26万ユーロ(約2,700万円)

歴代王者:アンディ・ソウセック、ディーン・ストーンマン、ミルコ・ボルトロッティ

後にF3000に姿を変え、2005年にはGP2へと変ぼうを遂げたもともとのF2シリーズは運営的にも大成功を収めているが、2009年にマックス・モズレーの手によって復活したFIA F2選手権はGP2よりも低コストで参戦できるとはいえ、才能面でも歴史面でもあまり成功しているとは言えない。1.8リッターのアウディエンジンを搭載するマシンはウィリアムズが開発したもの。チャンピオンになると各シーズン末にウィリアムズで1日のテスト走行のご褒美が与えられる。F1直下のカテゴリーに位置づけているにもかかわらず、まだF1でレースを戦った出身ドライバーはおらず、多くのドライバーが同シリーズを時間とスポンサーマネーの浪費だと評価している。

オートGP:60万ユーロ(約6,240万円)

歴代王者:フェリペ・マッサ、ロマン・グロージャン

1999年にイタリアF3000選手権として始まった同シリーズは多くの名称変更を経て、2010年にオートGPへと生まれ変わった。ローラがデザインした第1世代のA1GPマシンが使われ、3.4リッターV8ザイテックエンジンを搭載。カレンダーにはモンツァやスパなど複数のグランプリサーキットが含まれているが、F1を志望する者のリストとしてはあまり重要視されていない。

2006年にF3ユーロシリーズのタイトルを勝ち取ったポール・ディ・レスタ © Sutton Images
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F3ユーロシリーズ:60万ユーロ(約6,240万円)

歴代王者:ルイス・ハミルトン、ポール・ディ・レスタ、ニコ・ヒュルケンベルグ

2003年に発足したF3ユーロシリーズは、フォーミュラ・ルノーやフォーミュラBMWの中級シリーズと、ルノー・ワールド・シリーズやGP2などの一流シリーズの中間に位置づけられる。チームはダラーラ製のシャシーにメルセデスかフォルクスワーゲンのエンジンを選ぶことができ、いずれも2リッターの容量を持つ。DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のサポートカテゴリーとして運営されているが、現在のグランプリサーキットは3つしか含まれていない。

GP3:60万ユーロ(約6,240万円)

歴代王者:エステバン・グティエレス、バルテリ・ボッタス

まだ誕生して2年のシリーズではあるものの、GP3はすでにGP2の下部カテゴリーとして確立されつつある。同シリーズ出身ドライバーのロバート・ウィケンズが先ごろF1グランプリデビューを果たした。エステバン・グティエレスなど2010年にこのシリーズを戦ったドライバーの多くがGP2へとステップアップしている。強力なフィールドや多くのマシンが並ぶグリッド、そしてすべてのF1チームに印象づけるべくF1レース週末に組み込まれるなど、ドライバーやモータースポーツ関係者から熱烈な称賛を受けている。ダラーラ製のマシンには2リッターのルノーエンジンが搭載される。

フォーミュラ・ルノー3.5(ワールド・シリーズbyルノー):75万ユーロ(約7,800万円)

歴代王者:フェルナンド・アロンソ、ロバート・クビサ、ヘイキ・コバライネン

GP2のハイコストにより、近年はフォーミュラ・ルノー3.5(一般にはワールド・シリーズbyルノー/WSR)が繁栄してきている。ドライバーたちはGP2に先だって、より安価でコース上の時間が多く、多数のスポンサーを引きつけるWSRのシートを優先し始めた。レースの無料チケットは強力なファン基盤を築き、シルバーストーンで行われたWSRの観客数は驚異的な12万人を数える。

GP2: 180万ユーロ(約1億8,700万円/メインシリーズのみ)、60万ユーロ(約6,240万円/アジアシリーズのみ)、220万ユーロ(約2億2,900万円/メインシリーズおよびアジアシリーズ)

F1への最後のステップと目されるGP2シリーズ © Sutton Images
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歴代王者:ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ、ティモ・グロック

2005年の発足以来、GP2はF1フィーダーシリーズの帝王に君臨し、チャンピオンに輝いたドライバーやランキング2位に入ったドライバーは一人を除いて全員がF1に昇格している。GP2アジアシリーズは4回のシリーズが行われたもののあまり大成せず、今年末に廃止されることが決まったが、メインシリーズは大成功を収め続けている。しかしながら、費用の高額さが足かせとなり、財政的に恵まれない優秀なドライバーがはじかれてしまうなど、若く速いドライバーが手にするはずのシートを、多くの資金持ち込みが可能なドライバーが奪ってしまう第二の欠点がある。ダラーラ製のシャシーには4リッターのルノーエンジンが搭載され、ラップタイムはF1マシンから約10%遅れにすぎない。

F1:300万ユーロ(約3億1,200万円/HRT)から4,000万ユーロ(約41億6,100万円/フェラーリ)

歴代王者:セバスチャン・ベッテル、ルイス・ハミルトン、フェルナンド・アロンソ

ジュニアカテゴリーで過ごす多くのシーズンを通して要求されるスポンサーの獲得という不可能を達成したとしても、話はそう簡単には進まない。後方グリッドに陣取っているとはいえ、ヴァージンは500万ユーロ(約5億2,000万円)、HRTでさえも300万ユーロ(約3億1,200万円)を必要とする。さらに上位のグリッドを目指そうと思えば、トロ・ロッソで1,000万ユーロ(約10億4,000万円)、ルノーでヴィタリー・ペトロフのチームメイトに就きたければ1,200万ユーロ(約12億4,700万円)を費やすことになる。もし自分がフェルナンド・アロンソだったとしてフェラーリのシートを得たい場合、『Santander(サンタンデール)』はそのプロセスを容易にすべく善意の申し出として4,000万ユーロ(約41億6,100万円)程度を提供するだろう。F1においては才能がすべてでないことは明白だ。

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