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  • 初のF1選手権、質素な始まり・・・

特集:1950年イギリスGP

Alan Henry / Jim 2011年6月24日

【アラン・ヘンリーがシルバーストーンで開催された初のF1世界選手権レースを振り返ります】

第二次世界大戦で使われた飛行場の跡地に建設されたシルバーストーン © Getty Images
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シルバーストーンは文字通り、第二次世界大戦の真っ只中に地図に登場した。BRDC(ブリティッシュ・レーシングドライバーズ・クラブ)の保存記録によると、5つの巨大な格納庫を有する重爆撃機の飛行場はイギリス空軍(RAF)のため土木技師モウレムによって建設され、その費用は111万2,565ポンドだと伝えられている。6,000フィート(約1.8km)のメイン滑走路は南北に走り、3,900フィート(約1.2km)と4,200フィート(約1.3km)の2本の滑走路と交差していた。戦後すぐに競馬場へと姿を変えたことから長さ3マイル(約4.8km)の周辺道が組み込まれ、これが大きな意味を持つ。

1940年代後半はイギリス国民にとって厳しく激しい、そして強硬な時代だった。(戦後の)配給は1950年代に入っても続き、1947年の年明けから数カ月間は全国が雪の毛布に覆われる世紀最悪の寒波が襲う。それにもかかわらず、この歓迎しがたいうわべだけの耐乏の下で、熱心な数人の集団はモータースポーツに対する彼らのスピリットを絶やしてはならないと、何らかの形でモータースポーツを蘇らせることを決意。参加が見込まれた多くの人々は戦地での戦いを経験しており、平和を迎えてなお、それぞれのアドレナリンの放出を維持できるとの思いから娯楽への関わり合いを継続したいと決心する。

初期のサーキットはかつてのRAFベースの周辺道路を中心にレイアウトされ、干し草の俵やオイルドラムなどを用いて正確なサーキットの境界線が記されていた。元飛行場がモーターレーシングの会場用に変ぼうを遂げたのはこれが初めてのこと。これを皮切りに、スネッタートン、スラクストン、ボアハムなど同様の会場がレースコースへと姿を変え、戦後の休息の中、楽しみに飢える人々にレジャーアミューズメントを提供した。

初期の頃は最小限だった安全性基準 © Getty Images
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信義に厚いレースファンにとっては"シルバーストーンの経験"の一部となったずぶ濡れの駐車場や長蛇の列も、それに不平不満を言った者たちにとっては、矛盾の懸念なしには語れないかもしれない。1950年代初旬に登場した施設はその先のさまざまなことを方向づけている。

"観客のための施設"を設けることはほとんど考えられていなかった。事実、初期のシルバーストーンのトイレがいかに原始的だったかは王室自動車クラブ(RAC)のメンバー、ジョン・モーガンの妻ヘーゼル・モーガンによって印象的な詳細が語られている。女性用トイレにできた長蛇の列に並んだ末、ようやく順番が回ってきた彼女が小部屋に入って座っていると、突如としてすきま風と「足元の暗闇が和らいだ」ことを感じたという。

するとロンドン訛りの上機嫌な男性の声で「はいどうぞ。あなたには素敵でキレイなバケツを」と聞こえ、バケツの後ろにあるフラップが閉じられて再び暗闇が戻ったそうだ。

しかしながら、1950年に話を戻すと、後にシルバーストーンのオーナーとなるBRDCはまだ今日のような商業的に力を持つ企業には至っていなかった。BRDCに付託された権限は控え目以上のものがあった。同シーズン、FIAは初の公式世界選手権コンテストを考案し、シルバーストーンで開催されたイギリスGPに幕を開け、7つの"歴史的な"レースが展開されている。RACの重要人物にとってはさらに興奮があった。キング・ジョージ6世とエリザベス女王が招待状に応じて出席したのだ。これによりシルバーストーンのイベントにさらなる面白みが加わった。

1950年イギリスGPでチームメイトのルイジ・ファジオーリをリードするジュゼッペ・ファリーナ © Getty Images
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王室ご一行はコントロールラインのある直線に設けられ、金箔張りのアームチェアと万国旗にバラが用意された専用グランドスタンドに陣取った。王家は特別に組み立てられたサーキット上の様子をより近くで見られるポイントに移動した後、今は現存しないブラックリーの駅からロイヤル・トレインに乗ってロンドンへと帰路についている。

レース自体はアルファ・ロメオのワークスチームが勝利。ジュゼッペ・フェリーナが初代ウイナーに輝いた。

シルバーストーンにとっては長い、長い旅路の始まりだ。モータースポーツ界において最先端の施設とコースを誇るサーキットとして現在の立場を確立し、2009年末にはFIA F1世界選手権の公式レースでは史上最長となる商業契約を締結した。

© ESPN Sports Media Ltd.
Alan Henry Close
Alan Henry is a journalist at the Guardian and author Alan has been reporting on F1 since 1973 since when he has covered more than 600 Grands Prix and written more than 40 books on motorsport subjects. Currently a columnist for the Guardian and Autocar, he has edited the prestigious AUTOCOURSE annual for 20 years and contributed to a wide variety of publications across the world