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  • 『Formula Money』より

特集:ペイドライバーの復活

Caroline Reid and Christian Sylt / Me
2011年1月28日
すべてのF1ドライバーがリッチなのではない © Sutton Images
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"F1ドライバー"という言葉を聞いて多くの人々が想像するのは、すべてを手に入れた人間、トップチームから惜しみなく金を与えられ、華やかな生活を謳歌(おうか)し、この世の贅の限りを尽くしながら世界中を飛び回るような人物だ。

だが、2011年のグリッドにいる多くのドライバーにとって、現実はだいぶ異なる。報酬の使い道を考えるのではなく、彼らはグリッドのテールエンドでキャリアを維持するために、1ペニー(1円)でも多くの支援金をかき集めようとしている。3つ星ホテルで毎晩テレビを見てくつろぐなどとんでもない。F1ドライバー市場は変革の時を迎えており、5年ぶりにペイドライバーが復権してきている。

2010年のドライバーラインアップを見わたすと、そうした資金力の差が顕著に現れていた。『Formula Money(フォーミュラ・マネー)』によると、シーズン中にドライバーに支払われた報酬は推定総額1億3,085万ドル。だがそのうちの大部分にあたる72%はわずか5人のドライバー――フェルナンド・アロンソ、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトン、フェリペ・マッサ、ミハエル・シューマッハ――の懐に収まった。

フェラーリ加入に際し、アロンソは年俸4,000万ドルを稼ぐ初のドライバーとなり、ダントツの最高額を記録した。しかし同じF1ドライバーの間にも、とてつもなく大きな貧富の格差が生じている。アロンソの記録的な年俸とは対照的に、幾人かのドライバーは給与を受け取っておらず、反対に現金やスポンサーマネーを持ち込んでシートを手に入れていた。ペイドライバーがこれほど強い影響力を持ったのは、2005年以来のことだ。

この変化の大きな要因となったのは、F1チームの入れ替わりにある。2010年に登場した小規模チームは、自動車メーカーを母体とした彼らの前身と違い、大金でドライバーを雇ったりせず、またそうできる立場でもなかった。

2010年、シートを与える対価として4人のドライバーから資金を回収したHRT © Sutton Images
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新興チームの中で最も貧しいHRTは、2010年のドライバーたちから1,600万ドルの収入を見込んでいたという。だがドライバーの頻繁な交代劇を見る限り、その実現は決して簡単ではなかったようだ。ヴァージンはペイドライバーのアンディ・ソウセックとテスト契約を結んだものの、彼はシーズン半ばで自らチームを去った。ほとんどマシンに乗れなかったにもかかわらず、推定1,400万ドルを振り込み済みだったと言われている。

利益を得るためにこのような方法を採ったのは新規チームに限ったことではない。ルノーのような確立したチームでさえ、ロシア人ドライバーのヴィタリー・ペトロフと契約することによって、スポンサーシップを享受しようとした。ペトロフの獲得ポイントはチームメイトのロバート・クビサより109ポイント低かったが、彼のおかげでチームはロシアのスポンサーから5,500万ドルの支援金を受け取り、さらに1,000万ドルがペトロフの父によって追加されたと言われており、違う形で貢献を果たしたのである。

ルノーはすぐに、ペトロフの貢献は金銭的なものだけではなかったことを強調。チーム代表のエリック・ブーリエは「ヴィタリーの2倍の金額を持ち込めるドライバーもいた」と主張している。一方でオーナーのジェラルド・ロペスは彼が"ペイドライバー"だということを否定しながらも、「彼自身、そして彼が呼び寄せたスポンサーは、皆優れたスポンサーたちばかりだった」と話していた。

スポンサーの価値を認めつつ、ペトロフをペイドライバーと認めたがらないということは、その呼び方にある種の不名誉が伴うことを示している。多くの人々にとってその言葉は、あまり才能がないにもかかわらず、財布だけは大きな若手ドライバーを意味する。おそらくロペスはペトロフをそうしたカテゴリーに位置づけるのはふさわしくないと考えたために、先の発言をしたのだろう。またこの言葉には新興市場国出身で、母国から多数のスポンサーを引き連れてくることのできる2軍ドライバーを意味する場合もある。彼ら自身が小切手にサインするのではないかもしれないが、こうしたドライバーたちの魅力はやはり、資金力だ。

テルメックスの財力を武器にザウバーのシートを手に入れたペレス © Sauber
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2011年にはほかにも数人のルーキーがペトロフに続こうとしている。メキシコ人のセルジオ・ペレスは地元通信事業最大手の『Telmex(テルメックス)』から推定1,000万ドルをザウバーにもたらしており、ウィリアムズは有望なニコ・ヒュルケンベルグを放出して、代わりにスポンサー豊富なベネズエラのパストール・マルドナドを採用した。マルドナドは2010年のGP2チャンピオンであり、決して実績がないわけではない。だが、GP2のグリッド上で最もスポンサーの多いドライバーだったということが、彼の前進を妨げることはなかっただろう。推定300万ドルの個人スポンサーを持つ彼には、ライバルたちと比べて明らかなアドバンテージがあった。彼のベネズエラのスポンサーが2011年にウィリアムズに投資する金額は1,500万ドル相当になると考えられており、『RBS』、『Philips(フィリップス)』、『McGregor(マックレガー)』、『Air Asia(エアアジア)』等、4,400万ドル近いスポンサー契約を失ったチームにとっては心強い存在だ。

ルノー同様、ウィリアムズもまたペイドライバーという響きの悪さを避けようとしており、会長のアダム・パーはそうした評価を"不快で見当違い"といら立ちを示す。そして「われわれは準備不足なドライバー、F1にふさわしくなく、結果を出せないようなドライバーを乗せたことは一度もない。彼はルーキーチームでGP2タイトルを獲得しており、誰よりも多くのレースに勝っている。このようなことまで説明しなければならないというのは非常にばかげた話だ」と付け加えた。しかしながら、マルドナドにレース実績があるからといって、彼の資金的魅力が弱まるわけではなかろう。

ペイドライバーというレッテルを張られることの問題の1つは、チームが資金集めに必死だというイメージを植え付け、才能面に多少は目をつぶってでも予算を増やそうとしているとの印象を世間に与え兼ねないことだ。それでも、ルノーやウィリアムズのようにパフォーマンスを犠牲にすることができない中堅チームの場合、実態はそこまで割り切れるものではない。グリッドの後方から脱出するチャンスのないチームであれば、ドライバーの才能など気にする必要はないだろうが、中堅チームにとって優秀なドライバーがもたらす数ポイントや表彰台は、賞金の増額や大規模なスポンサーシップにつながる大事なものだ。スポンサーシップと才能のバランスが重要になる。

このため、最近の新しいペイドライバーたちの多くは立派な経歴を持っている。ペトロフ、ペレス、マルドナドとHRTのブルーノ・セナは全員GP2優勝経験者――いずれにしろ、最終的にはF1に到達したと思われる経歴を持つドライバーたちだ。しかしながら、金銭的なバックアップは、彼らを同程度の素質を持つライバルたちよりも魅力的に見せる。予算の穴を埋めたいチームが彼らに飛びつくのも不思議ではないだろう。

1990年代のペイドライバーの典型、井上隆智穂 © Sutton Images
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1990年代、F1でペイドライバーが面白おかしく扱われた時代とは非常に対照的だ。その典型が、1度もポイントを獲得することなく、メディカルカーにひかれたことがある日本の井上隆智穂。あるいは大富豪の息子だったペドロ・ディニス。彼はブラジルのスーパーマーケット・チェーン経営者の息子で、家族の資産から莫大なキャッシュを持ち込んでいた。

ペイドライバーの復活によってF1が直面する大きな問題は、才能あるドライバーでさえスポーツへの足掛かりとしてスポンサーの存在が不可欠となれば、どんなに有望な才能を持っていてもそれ相応の資金力がなければF1にたどり着けない者が出てくる可能性があるということだ。

とはいえ、グリッドにたどり着いた者はF1の権力者たち前で才能を披露し、後に報酬を支払われるスタードライバーに転身することができる。裕福でも成功できなかったドライバーは数多くいるが、ペイドライバーが表彰台の頂点に立つことは決して不可能ではない。思えば7度の世界王座に君臨したミハエル・シューマッハも、1991年に最初のドライブを手に入れるためにジョーダンに15万ドルの持参金を支払っている。その後20年間で、彼はその3,000倍の報酬を手にするようになった。

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