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© Jose Breton/Pics Action/NurPhoto via Getty Images
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ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とメルセデスのF1エンジン部門がわずか10日間で呼吸マスクのリバースエンジニアリングを成功させたことで、新型コロナウイルス感染患者の治療を支えるための迅速な製造が可能となった。

この呼吸マスクは経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP/シーパップ)の装置として知られ、呼吸困難の患者の治療に用いられる。

重症化する新型コロナウイルス(COVID-19)感染者の急増により、NHS(イギリスの国民健康保険)はこの先数週間で人工呼吸器不足に陥るリスクに直面しており、イギリス政府は呼吸器などの医療機器の製造を増やすべく業界に要請している。F1はその要請に応じるために"プロジェクト・ピットレーン"を立ち上げ、イギリスを拠点とする7チームが専門知識を生かして全面協力している。

3月18日(水)以降、メルセデスF1チーム、レーシング・ポイント、ウィリアムズにF1エンジンを供給するメルセデス・ハイ・パフォーマンス・パワートレインズ(HPP)はUCLと共同でCPAP機器の製造拡大に向けて取り組んできた。UCLで作業に取り組むチームは特許切れの機器を分解するところから始め、100時間と経たずして設計のリバースエンジニアリングに成功、迅速な大量生産につながるより適した設計図を見いだした。

新しいCPAPの設計はすでにNHSによって承認され、国内の病院に早急に導入できるよう準備が進められている。

UCL機械工学科のティム・ベーカー教授は「切迫した要請を受け、何年もかかるようなプロセスをわずか数日間で生み出せたことをありがたく思っています」とコメント。

「概要を聞いてから、私たちは1日の稼働時間すべてを使って特許切れのデバイスを分解して解析しました。コンピューターのシミュレーションを用い、大量生産に適した最新技術バージョンを生み出すため、われわれは機器をさらに改良しています」

「F1の能力を招集する機会に恵まれ、このコラボレーションはUCL機械工学科とHPPの密接な関係によって実現したものです」

また、メルセデスHPPの責任者であるアンディ・カウエルは「さまざまなプロジェクトを同時に進めなければならない国家の要請を支援するため、"プロジェクト・ピットレーン"のもと、力を合わせるF1界は支援要請に見事に対応できたと思います」と述べた。

「CPAPプロジェクトを遂行するUCLの取り組みに、許された時間の中で最も速く、かつ最高水準なわれわれのリソースを生かせたことを誇りに思っています」

CPAP装置は酸素だけが不十分な場合、新型コロナウイルスに感染した重度の肺炎患者が楽に呼吸できるよう、イタリアや中国の病院で広範囲にわたって使用されている。CPAP装置は一定陽圧の空気を口と鼻から気道に送り込み、常に気道を塞がらないようにした状態で肺に送り込む酸素量を増やす補助装置として機能する。

イタリアの報告によれば、CPAP療法で治療を受けた患者の50%が人工呼吸器の装着を回避できたという。人工呼吸器は肺に直接酸素を送り込むことができる一方で、患者の気管に挿入するチューブの管理と過度の鎮静作用が求められる。

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