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フェラーリF1エンジン搭載、世界で1艇のボートが売りに出される

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2019年8月17日 « ライコネンの息子がカート初体験 | アロンソがダカールラリー参戦に向けて始動 »
© EMMANUEL DUNAND / AFP
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フェラーリF1エンジンを搭載した世界に1艇だけのスピードボートが売りに出されている――金額はいくらか? それは聞かない方がいい。

1952年、イタリアのスピードボートレーサー、アキーレ・カストルディは800kgクラスでの水上最速記録を目指すことにした。それを達成するために、彼はコモ湖のティモッシ造船所に新しいスリーポイント・ハイドロプレーンを発注した。

ライバルのマリオ・ベルガにアルファロメオエンジンの契約を奪われたカストルディは、友人だったレースドライバーのアルベルト・アスカリとルイジ・ヴィロレージからエンツォ・フェラーリを紹介される。フェラーリはそれまで船舶用のエンジンを製造したことはなかったが、エンツォは第二次世界大戦でドイツ軍から2台のアルフェッタ158レースカーを隠そうとしたカストルディの心意気に感心し、F1仕様のV12 Tipo 375エンジンを提供することに同意した。

こうして生まれたのがユニークなティモッシ・フェラーリ・"アルノXI"だった。

レーシングレッドのエンジンカバーととマホガニーの板で覆われた下に385bhpの出力を秘めたアルノXIは、製造された目標達成を約束されたようなものだった。最初のテストは1953年1月に実施され、カストルディは非公式に時速約200kmのトップスピードを記録したが、すぐにこれでは不十分なことが明らかになる。ベルガが800kgクラスの新記録となる往復平均時速226kmを出したためだ。

それでもカストルディはうろたえることなくフェラーリに戻り、エンジンをアップグレードして作り直してもらうことにした。マラネロのエンジニアたちは2つのスーパーチャージャーとシリンダーごとに2つのスパークプラグを追加し、エンジンがメタノールで動くように作り替えた。その結果、パワーは600bhp超に向上した。

1953年10月15日、カストルディはイゼーオ湖で新記録に挑み、1kmの往復平均時速242kmを達成――この記録は66年たった今もまだ破られていない。

カストルディはその後、1,700kgクラスのハイドロプレーンで事故に遭い、また別の事故でベルガが命を落としたこともあってスポーツを引退。1958年にアルノXIはナンド・デロルトという資産家のドライバーに売却された。そこでアルノXIは選手権レース仕様に改造され、特徴的なエアインテークとリアフィンを持つ現在の姿に生まれ変わった。

多くの成功を収めた後、デロルトは1968年に競技を引退し、アルノXIはそれから25年近くミラノの倉庫に保管されることとなる。朽ち果てる寸前だった1990年代初めに新たなオーナーの手に渡り、元の状態にレストアされた。V12エンジンは無鉛ガソリンで動くよう製造元のフェラーリで改造され、2012年のオークション時の書類によるとベンチテストでは700bhpを達成したという。

アルノXIは2012年に86万8,000ユーロ(約1億200万円)で落札され、モデナのフェラーリミュージアムで展示されていた。それが再びデュポン・レジストリーを通して売りに出されることになった。カストルディが持つ1953年の水上最速記録の証明書を含め、多くの歴史的資料が付随している。

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