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ブラウンが語る今季の勢力図、未来のF1

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2019年3月11日 « フェルスタッペン&ガスリーがいちょう並木を駆ける! | 開幕戦からファステストラップにも得点が »
© Charles Coates/Getty Images
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2019年のF1シーズンは近年で屈指のエキサイティングなものになること間違いなしだ。5年間続いたメルセデスの支配を打ち破る力をついにフェラーリが手に入れ、新たな空力レギュレーションはレースをいっそう面白くするはずだ。

だが、そうした裏で今年はF1にとって決定的な年でもある。2021年にスポーツに革命を起こすという計画をオーナーのリバティメディアが実行しようと思うなら、6月末までにはチームたちとの合意を結ばなければならない。それができなければ基本的には"合意なき"F1ということになってしまい、スポーツ最大のビッグネームたちが2021年以降もF1に居続けるという保証がなくなってしまう。

F1モータースポーツ部門のマネジングディレクターを務めるロス・ブラウンが選ばれたメディアを相手にしたQ&Aセッションを開き、今年の予想と迫りつつある2021年に向けた期限の状況について説明した。

テストを終えた今、誰が速そうだと思いますか?

ブラウン: フェラーリは初めからかなり良かったが、いくつか信頼性トラブルを起こしており、それを解決しなければならない。彼らのタイムを見て、想定される燃料量を考えることはできるかもしれないが、同時にサーキットを走るマシンを見れば、どこが安定していて快適なマシンで、どこが苦戦気味かが分かる。フェラーリは良さそうだよ。

私もガレージで少し時間を過ごしたが、落ち着いた良い雰囲気の中、建設的で良い作業が行われていた。(新チーム代表の)マッティア・ビノットのことはとてもよく知っている。彼は非常に実際的なアプローチを取るだろう――彼は私と同じエンジニアなので、特定の方法で物事を見るはずだ。彼もわれわれのように感情的になる。そのためにスポーツをやっているのだからね。だが、非常に構造的でもある。来るシーズンのフェラーリには新たな落ち着きが見られることだろう。

メルセデスは少し元気がないように見えたが、彼らなら解決するだろうね。非常に強いチームだし、とても優秀な人々がそろっている。自分たちのすべきことを見つけ出すはずだ。また、励みになったことの1つは(レッドブルとトロ・ロッソに搭載される)ホンダエンジンの信頼性だった。ジンクスになるのは嫌なので用心したいところだが、Hondaには本当に励まされるよ。彼らのパフォーマンスと信頼性は大きくステップアップしたようだ。

© Dan Istitene/Getty Images
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2019年のレギュレーション改革はレースを改善するのでしょうか?

ブラウン: 実施したレギュレーション変更についてはさまざまなフィードバックがあった。一番悪いフィードバックは何の違いもないというもので、一番良かったのは大きく変わったというものだ。全ての情報を受け取るのは各車が接近して走り始めてからことになるだろうね。2021年に向けたわれわれの仕事にとって大変有益な洞察になることだろう。一応言っておくが、これは完全なるソリューションにはほど遠く、2021年に達成できるもののほんの一部に過ぎないよ。

2021年以降のテクニカルレギュレーション、スポーツのガバナンス、収益の分配方法についての交渉の進行具合はいかがですか?

ブラウン:
チャレンジングだよ。だが、最初からそれ以外のことは想像していなかった。10チームを同調させて、収益、ガバナンス、レギュレーション、コストキャップについてのソリューションを定めるというのは相当大きなチャレンジだ。時間がかかる。しかし、進行はしている。メディアにとっては少しばかりいら立つ状況だと思うが、こうした議論をプライベートな場でできるだけ静かにしたいというチェイス(ケアリー/F1 CEO)のアプローチは正解だと思う。それが物事を進展させる最善の方法だと彼は感じているんだ。本当に大きな進展が私には見える。

例えばコストキャップについて人々は何も起きていないと言うが、それは事実ではない。われわれは昨年ドラフトレギュレーションを発行した。1月には最終的レギュレーションを発行した。そしてわれわれは先週も今週もチームたちと深く関わり、話し合っている。チームと一対一で積極的に対応し、彼らからフィードバックを得て、彼らの懸念を理解し、改善できる箇所を見つけ出している。例えばコストキャップに関してある日付で最終的レギュレーションを発行したからといって、それでおしまいにするといった状況には決してならない。これはあまりに複雑過ぎるトピックだ。そのため進化するにつれて新しいチャレンジ、トラブル、問題が見えてくる。われわれも進化し、目的を達成するためにレギュレーションを改善しなければならない。

それは技術規則でも競技規則でも変わらない。技術と競技、この2つのエリアには十分に確立されたルーティンとプロトコルがあるが、それでも議論はあるのだから、財政規則だけが議題に上り、受けるか否かにかかわらず、それで終わると考えるのは単純だろう。チームごとに異なるプライオリティがあって、われわれは最善のソリューションを見つけるための方法を探している。本格的な進展もあるし、あなた方の何人かがコメントしたように、さほど進展がないように見えるものもあるだろう。だが、実際には膨大な量の進展があると保証できるよ。技術規則は順調だ。

© Xavier Bonilla/NurPhoto via Getty Images
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歴史的に、トップチームは常に他よりもはるかに大きな賞金分配を享受してきました。チーム間でより平等に収益を分配しようというF1の計画に、フェラーリ、メルセデスとレッドブルはどのような反応を見せているのでしょうか。

ブラウン: 収益はタフな議論だ。それは分かっている。多くもらっている者はをれを維持したいし、そうでない者はもっと多くの分け前を望んでいる。そのため、収益をどのように振り分けるかの公平なバランスを見つけねばならない。もっと公平に収益を分配できればF1はより良いものになる。それは事実だ。今もそれに向けて努力している。

多くの進展が見受けられるし、私にはまだ熱意がある。他の人と同じように私にだって悪い日はあるよ。だが、99%の時間は前進と進歩が見られる。必死でもがくしかないのは分かっていたこと。回り道などない。F1チームというのは大き過ぎるし、コンペティティブ過ぎるし、アグレッシブ過ぎてそれ以外の何者にもなれない存在だ。だが、われわれとFIAは何に向けて努力するかで一致している。それは大きな力であり、エネルギーを無駄にせずに済む。以前はFIA、チーム、F1の争いによってあまりにも多くのエネルギーが浪費されてしまっていた。自分たちの今の状況にはとても興奮している。もう少し速い進展を望むのは誰も同じだが、それがなされる時には適切な形でなされる。今はまだ途上だ。

2021年の契約の最終期限はいつですか?

ブラウン: 技術規則に関しては2つのエレメントがある。1つは今年半ばのデフォルトで、国際競技規則についてのものだ。だが私はそれまでに将来的なガバナンスの明確な図を描き、より公正な形でのレギュレーション導入を助けられればと思っている。しかし、それが達成できなかった場合の2021年のデフォルトは国際競技規則に向き合うものであり、それにはレギュレーションが今年半ばまでに導入される必要がある。それが最初の期限だ。

賞金分配に関しては?

ブラウン: それは今ここで話すにはデリケートな話題だろう。同じ議論が続いており、現在われわれは6チームしか含まないストラテジーグループを持っている。それは間違いだ。どのようなガバナンスシステムで進むにしろ、そこには全チームが含まれることになるし、今のものより合理化されたバージョンになるのは間違いない。

最も有利な契約を結んでいるのはフェラーリです。チームのスポーツ撤退というリスクもあると思いますが、彼らに強硬姿勢をとることになるのでしょうか?

ブラウン: フェラーリの場合、その重要性、存在感の大きさ、スポーツ内における無比の立場というのは確かに理解すべきだと思うが、同時に非常に重要なチームだというフェラーリの認識と、残りのチームとの間に公平なバランスを見つける必要があると思う。あなたがもし、大きなスポーツ企業でF1参戦を考え、実行して"ワールドチャンピオンシップに勝ったなら何を手に入れられるだろう"と夢見たとしよう。ところが実際には、本当に勝ったとしても中団チームの半分しか(報奨金が)もらえない。彼らの方が有利な契約を結んでいるからだ。そんな不公平な分配がされているようでは、どうやって新規チームを引きつけられる?

それはフェラーリも認識していると思うし、彼らは必死で食い下がろうとするだろうが、ソリューションを見つけるには論理が役目を果たすのではないだろうか。とはいえ、フェラーリは特別だよ。それは皆知っているし、他のチームも知っている。フェラーリは敬意を持って扱う必要があることは理解してくれるだろう。私が言いたいのはただ、今よりも公平な契約が望ましいということだ。誰かがやってきてワールドチャンピオンシップに勝ったとしても、歴史的に有利な契約を持つ後方チームの半分しかもらえないというのはフェアではない。それは何としても解決しなければならない問題だ。スポーツには大御所というものがいる。だがバランスというものがあり、(現在の契約で)われわれはそのバランスを間違えてしまっている。なぜこうなってしまったかは皆分かっているはずだ。

フォーミュラEは第2世代のマシンを使用していて、自分たちの電気自動車をロードで走らせたいと考えるマニュファクチャラーたちを引きつけています。ロードとの関連に関してのF1の立場をどう見ていますか? 最終的に電気化することはあるのでしょうか?

ブラウン: 正直なところ、私には分からない。われわれの誰にも5年後の自動車の世界がどうなっているかは分からないはずだ。電気自動車を巡る環境は大きな盛り上がりを見せているが、一方でそこには大変なチャレンジもある。そしてこれから進化が起こるだろう。

イギリス国内での電気の生産方法を見れば、電気自動車によって生じる環境汚染はまだ、非常に高効率の小型ガソリン車とほぼ変わらないことが分かる。まずは電気をどうにかして生み出さなければならないからだ。今のイギリスでは必要とされる再生可能な電気は生産されていないので、そうした電気を使っているわけだ。自分たちの車を充電するために皆が電気を使うとどうなるかを想像してみなさい。だから、この先には大きなチャレンジが待っているし、内燃エンジンにも追求する価値のある道が残されていると思う。

電気自動車の熱狂が一段落してからでなければ、本当にそれが将来のソリューションとなるのか、あるいはソリューションの一部となり得るのかを理解することはできない。電気自動車が環境汚染の場所を移動させることができるのは確かだ。それを町の中心部から発電所に移すことはできるかもしれないが、今のところなくすことはできない。それを理解することが重要だ。われわれは最速でなければいけないし、最もパワフルで最もスペクタキュラーでなければならないが、将来的にはそれを達成する違うパワーソースが出てくるかもしれないよ。

現時点で、今日われわれの使っているハイブリッドパワーは効率性、パワー、サイズ共にかなり優れたものだ。これからの展開については想像できない。FIAは未来のパワートレインを研究するグループを結成しており、われわれもその一員になっている。そこでは未来のレースエンジンの形や関連性、それがどのようにして輸送と結びつくかについて議論される。われわれはそれをモニターし、どこで関連性を持ち、何をすべきかをマニュファクチャラーから伝えてもらうことになる。だが、それを達成するためにどんなパワーソースを使うことになろうとも、スペクタキュラーでなければならないし、首筋の毛が逆立つような興奮をもたらすものでなければならない。

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ブレグジット(イギリスのEU離脱)と欧州内での運営に及ぼす影響について、一部チームから懸念の声が上がっています。10チームのうち7チームがイギリスに拠点を置いていますが、F1に問題が生じる可能性は?

ブラウン: 個人的にはないと思う。2000年問題を覚えている者は多いだろうが、飛行機が空から落ちて、大混乱が起きるなどと吹聴されていたが、結局違いに気付いたものすらいなかっただろう。ブレグジットによって官僚主義的なことが増えるのは少々痛いだろうが、それを除けばポジティブな議論もできると確信している。F1チームというのはリソース豊富でとても有能だ。こんなことで彼らにレースをやめさせることはできないよ。皆計画は立てており、機材はもう出国し始めている。そこから1、2カ月は国を離れることになり、再び国内に戻るための準備も進められている。

だがF1チームというのは遊牧民的なところがあって、EU外の国でも運営されているので、私はイギリスにとって破滅的なことになるとは考えていない。多少は腹の立つこともあるだろうし、痛みが伴うものもあるかもしれない。それでもF1チームは対処がとても得意だ。問題にはならないだろう。

シルバーストーンでのイギリスGP開催契約は2019年末で終了する予定です。今年のレースが最後のイギリスGPになる可能性はあるのでしょうか?

ブラウン: 最後のイギリスGPということはないだろう。だが、場所がシルバーストーンかどうかはまた別の問題だ。イギリスGPは開催したいし、シルバーストーンについてはソリューションを見つけたいが、何がリーズナブルで何がそうでないかについての見解に相違がある。大きくかけ離れているわけではないのに、ソリューションを見つけられないのはもどかしいよ。

イギリスでのレースはわれわれにとって大事だし、シルバーストーンは数年にわたってグランプリのホームとなってきた。だが、われわれの多くはブランズハッチで開催されていたことを覚えていて、ある年はブランズハッチ、次の年はシルバーストーンで行われてもそれほど不思議には思わなかった。イギリスGPは確実にキープしたい。シルバーストーンであればいいと思うが、それは確かではない。

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ミック・シューマッハーが今年F2デビューします。フェラーリ時代にあなたはミハエルと親しい関係でしたが、彼の息子がF1のすぐ下までやってきたことに感慨はありますか?

ブラウン: ミックのことは小さな頃から知っているから、とてもうれしいよ。彼も確信が持てなかった時期があったようだが、今は決心ができたようで、とても意欲的な青年だ。昨年のF3で見せた競争力は素晴らしかったし、F2の最初のテストでもまた見られた。彼を知る者、または私より彼と多くの時間を過ごす者によると、この12カ月ほどの間に彼のドライビングキャリアには印象的な進展があったそうだよ。

彼はとても礼儀正しい青年で、これから直面するであろうプレッシャーやチャレンジにも臆す様子はない。きっと大丈夫だ。彼の家族はとてもバランスの取れた一家で、マイケル(シューマッハ)の経験を全て知っている。ミックが成功した時にどう対処すればいいかは分かっているはずだ。それにしても本当にエキサイティングだし、私はミックの中にこれまで何度もマイケルの面影を見いだしているんだ。だからとても楽しみだ。だが若い彼の肩には途方もないプレッシャーがかかっている。人々には非現実的な期待を寄せるのではなく、バランスの取れた目で見てほしいね。

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