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特集:アルゼンチンよ、泣かないで

Alan Henry / Me 2010年7月8日
BT44のエアボックスが外れかけただけでなく、ホームレースのロイテマンにはこの後さらなる悲劇が待ち受けていた © Sutton Images
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1974年、ブエノスアイレスで開催されたアルゼンチンGPで最も注目されたのはおそらく、18年の亡命の後、前年に帰国したフアン・ペロン大統領の出席だろう。1950年代に偉大なるファン・マヌエル・ファンジオが一時代を築いて以来、アルゼンチンでモーターレーシングは人気スポーツの1つだったが、今やすべての期待は彼らの新しいヒーロー、カルロス・ロイテマンにかかっていた。この年、彼がドライブしたのはバーニー・エクレストンがオーナーを務める、ゴードン・マレー作の印象的なブラバムBT44である。

12月13日、レースはブエノスアイレスの郊外に位置する全長5.968kmのオスカル・ガルベス・サーキット、総レース距離316.315kmで行われた。コースは週末を通して慣習的な猛暑に見舞われ、予選の振るわなかったロイテマンがレースで脅威になり得るとは考えにくかった。小さなトラブルで先頭集団のペースから置いていかれただけでなく、彼のBT44は燃料ラインの故障でコース上にしばらく立ち往生を強いられる。

ポールポジションはビンテージに近いロータス72で1分50秒78をたたき出したロニー・ピーターソンで、ロイテマンは1分51秒55で6番手タイム。

事前のテストで、ゴードン・マレーは初めて軽量の"予選マシン"という革新的アイデアを投入――理論的に規定制限重量以下で走行することが可能になり――数年後に流行となる。「オルタネータがなく、慣性を減らすためにエンジンからクランクシャフトダンパーを取り外し、ほかにも軽量化のための工夫があった」とマレーは説明する。「後に(コスワース)DFVはしばしばクランクシャフトダンパーなしでレースに出るようになった。当時コスワースは"あり得ない"と言っていたがね」

スタート後トップに立ったのはピーターソンだったが、シャドウのピーター・レブソンとジャン-ピエール・ジャリエが絡んだ第1コーナーの混乱を利用してロイテマンが2番手に躍り出る。3周目、会場に大歓声がわき上がり、彼がトップに立ったことをブラバムのピットに伝えた。周囲からしてみれば青天のへきれきだ。

優勝こそならなかったものの、来場者とペロン大統領から大喝采を浴びたロイテマン © Sutton Images
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1周1秒近い差をつけて、コンパクトな白のブラバムははるか彼方へと走り去っていく。勝利は決まったかのように思われ、注目は2位争いに移っていった。だが、ロイテマンに悲劇が待ち受けていた。

レース3分の2を過ぎた頃、BT44のエアボックスが外れかけ、インフィールドから見守っていたマレーは、このトラブルがストレートで200rpmほどのロスにつながると感じた。状況はさらに悪化。

朝のウオームアップ中、ホイールベアリングの交換でピットはパニック状態に陥り、その結果ブラバム・チームの給油ルーティンがいつものように慎重に行われなかった。通常はウオームアップ後にタンクから燃料が吸い出され、その後5ガロン缶で正確な数の合計量が再給油されるはずだった。だがホイールベアリング交換に慌てていたため、この日のBT44への補給作業は目分量で終えられてしまい、どうやら缶の1つをロイテマンのタンクに戻し忘れていたらしいという恐ろしい事実が明らかになった。

ミスファイアを起こし、ガタガタと音を立ててスローダウンするロイテマンのブラバムは、デニス・ハルムのマクラーレンとニキ・ラウダのフェラーリによって残り2周のところで抜かれてしまう。さらに、チェッカーからわずか数kmという地点でとうとう燃料が底をつき、コース上で停止してしまった。結果は7位完走扱い。

「私は後に燃料消費量を計算してみた」と振り返るマレー。「エンジンのミクスチャーが間違って最高出力になっていたとしても、1缶分の燃料を入れ忘れたとしか考えられなかった」

どこから見ても、優れたレーシングドライバーによる、素晴らしいドライビングの最後に待ち受けていた苦い結末だ。ロイテマンはその後、F1キャリアで9シーズンを戦ったが、母国でこれほど勝利に近づくチャンスは二度と巡ってこなかった。

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Alan Henry Close
Alan Henry is a journalist at the Guardian and author Alan has been reporting on F1 since 1973 since when he has covered more than 600 Grands Prix and written more than 40 books on motorsport subjects. Currently a columnist for the Guardian and Autocar, he has edited the prestigious AUTOCOURSE annual for 20 years and contributed to a wide variety of publications across the world