一等になれ、そのためにまずは完走せよ――この格言にはおそらく"ルールに従った上で"と付け加える必要があるだろう。F1を統轄するFIAは新しいシーズンが始まる前に2つのレギュレーションを発行する。ひとつはスポーティングレギュレーション(競技規約)で現行版は54ページの構成。レース週末の流れや手続き開始に必要なライセンスの説明、規約違反の場合に科せられる可能性がある制裁措置などが記述されている。もう一方は88ページにおよぶテクニカルレギュレーション(技術規約)で、F1マシンの構造を網羅するすべての細かなルールが記載されている。

ここでは合計142ページにわたる両レギュレーションの重要部分、そして2014年シーズンに先だっての変更箇所を要約する。レギュレーションのすべてをご覧になりたい場合はFIA公式サイトへどうぞ。

テクニカルレギュレーション

【エンジン】

現在、パワーユニットの一部として言及されるようになったエンジンは毎分の最高回転数が1万5,000RPMに定められた1.6リッターV6ターボエンジンでなければならず、パワーユニット全体の最低重量は145kgが必要だ。エンジン、モーター・ジェネレーター・ユニット・キネティック(MGU-K/運動エネルギーを電気エネルギーに変える運動エネルギー回生装置)、モーター・ジェネレーター・ユニット・ヒート(MGU-H/排気エネルギーを電気エネルギーに変える排気熱エネルギー回生装置)、エネルギー貯蔵装置、ターボチャージャー、コントロールエレクトロニクスを含めてパワーユニットと呼ばれ、パワーユニットはドライバーあたり年間5基までの使用が認められている。5基の各コンポーネントについてはどのような組み合わせで使っても構わない。

さらなるコンポーネントが必要になった場合はケースに応じてそれぞれペナルティが科されられる。パワーユニット自体を完全に新しいものに交換する場合、当該ドライバーはピットレーンからレースをスタートしなければならない。コンポーネントのうち1つでも6基目を投入する場合は予選ポジションから10グリッド降格処分を、それとは異なるエレメントが6基目を必要とした場合は5グリッド降格ペナルティを受ける。7基目が必要になったコンポーネントがあれば新たに10グリッド降格処分が科せられ、7基目が投入される度に5グリッド降格処分、8基目以降も同様だ。

【ギアボックス】

各ドライバーとも6戦(レース週末の土曜日と日曜日が該当)連続して同じギアボックスを使用しなければならない。同基で5戦を戦い切れずにギアボックスの交換が必要になった場合は5グリッド降格のペナルティが科せられる。

【ERS(エネルギー回生システム)】

2011年にKERS(運動エネルギー回生システム)の搭載が義務化された後、F1は2014年から運動エネルギーだけでなく熱エネルギーも回生するシステムを導入。MGU-KおよびMGU-Hの2つを合わせてエネルギー回生システムと呼ぶ。MGU-Kはブレーキング時に発生する無駄なエネルギーを付加的パワーに変えて貯蔵、ドライバーがブーストボタンを操作して使用する。MGU-Hは熱エネルギーを同様の目的で回生するものである。

【DRS(ドラッグ・リダクション・システム)】

2011年に可動式ボディワークのレギュレーションが採用され、オーバーテイクを補助する目的でドライバーがコックピットからリアウイングを調整することが可能となった。各フリー走行や予選はタイミングを問わず、レースだけは測定地点で前車の1秒以内に位置している場合に限り、予め定められたコース上の指定区間においてリアウイングのフラップを開くことが認められている。ブレーキングによって同デバイスの動作が停止する。DRSは前後のマシンを競争させ、ドラッグ(抵抗)を低減させることで後車のオーバーテイクのチャンスを増やす目的で導入された。レーススタートおよびセーフティカー導入後のリスタートから2周以内、イエローフラッグ掲示中、ウエットコンディションでは使用が禁じられている。

【重量】

マシンとドライバーを含めた重量はレース週末のいかなる時点でも690kmを下回ってはいけない。各チームともできる限り軽いマシンを製造し、規定の重量に合わせるためバラストで調整を図っていく。ただし、ピレリが供給する2014年スペックタイヤが2013年仕様のものと比べて重さに違いがあった場合、最低重量に増減が加えられる可能性がある。

スポーティングレギュレーション

【レースの長さ】

すべてのサーキットが異なる全長であることから、レースは各サーキットにおいて305kmを超える最小周回数が設定されている(総距離260kmで争われるモナコ・モンテカルロ市街地サーキットを除く)。周回数以外にも、レースは最大で2時間まで、中断がある場合はその時間を含めて最大4時間までと決まっている。

【タイヤ】

各グランプリにはF1公式タイヤサプライヤーのピレリが供給する2種類のドライタイヤが持ち込まれ、雨天用のインターミディエイトタイヤおよびウエットタイヤも供給される。ドライコンディションで行われる決勝レースでは、両コンパウンドのタイヤの使用が義務付けられており、どのドライバーもタイヤ交換のため少なくとも1度はピットに入らなければならない。グランプリ中は各ドライバーに最大13セットのドライタイヤの使用が認められているが、初日のフリー走行に関してはFIAが追加的にプライムあるいはオプション、場合によっては開発中のタイヤの使用を認めた場合に1セット増えることもある。追加セットが支給される際はグランプリが開幕する少なくとも1週間前には各チームに通達されることになっている。

フリー走行1回目の序盤30分に1セットのプライムタイヤを使用しなければならず、チームは最初のセッション終了後に、使用したタイヤセットに加えて供給されているもう1セットのプライムタイヤを返還する。2回目と3回目のフリー走行が終わるとプライムとオプションの各セットを返還しなければならない。予選でQ3に進出したドライバーは同セッションで使用した1セットのオプションタイヤをレースが始まるまでにピレリに返還する。Q2までに脱落したドライバーに割り当てられたオプションタイヤの1セットはレース中にのみ使用可能。予選トップ10入りを果たしたドライバーはレーススタート時のコンディションがドライ、かつQ2で各自が最速タイムをマークした際にドライタイヤを履いていた場合、同じコンパウンドタイヤを装着してレースをスタートしなければならない。

見た目に分かりやすいようにとの配慮から、タイヤの側面がコンパウンドによって異なる色でペイントされ、スーパーソフトは赤色、ソフトは黄色、ミディアムは白色、ハードはオレンジ色が使用されている。雨天用のコンパウンドはインターミディエイトが緑色、ウエットが青色だ。

【予選】

1時間前後で行われる予選は3セッションで構成される。Q1(第1セッション)は22台すべてのマシンが参加し、好きなだけ周回を走ってタイムを計測する。2014年はQ1が20分間から18分間に短縮されており、Q1が終了した時点でタイムシート下位6台が脱落。Q1の最速タイムから107%以内のタイムに届かなかったマシンは予選落ちとなるが、フリー走行で十分に速いタイムを残していればレースへの出走が認められる場合がある。7分間の休憩をはさみ、Q1のタイムがリセットされた状態でQ2(第2セッション)がスタートする。Q2は15分間、ここでも終了時点で下位6台が姿を消す。2つのセッションを生き残った10台によるQ3(第3セッション)でポールポジションをかけた争いが展開される。Q2終了から8分後にスタートするQ3のセッション時間はすべてのチームが少なくとも2回はアタックできるように2014年シーズンに先だって12分間(それ以前は10分間)に延長されている。

【ドライバー】

少なくとも1回のフリー走行に参加していないドライバーはグランプリに出走できない。シーズンを通して各チーム、4名までドライバーを起用できる。

【ポイント】

最終戦を除き、優勝ドライバーに25ポイントが与えられ、上位10名が入賞となる。各順位に与えられるポイント数は以下の通り。

1位=25点、2位=18点、3位=15点、4位=12点、5位=10点、6位=8点、7位=6点、8位=4点、9位=2点、10位=1点

2014年シーズンの最終戦ではダブルポイント制が採用され、入賞者の得点は以下のようになる。

1位=50点、2位=36点、3位=30点、4位=24点、5位=20点、6位=16点、7位=12点、8位=8点、9位=4点、10位=2点

レースが所定距離の75%を周回していない場合は入賞者にハーフポイントが与えられる。ドライバーは自らが獲得したポイントのみ、チームには所属ドライバー2名の合計ポイントがコンストラクターズポイントとして加算される。

【ペナルティ】

他車の走行を妨害したり、クラッシュの原因となったり、ピットレーンで速度違反を犯すなどしたドライバーにはペナルティが科せられる。ペナルティの裁定はスチュワードとして知られるレースオフィシャルが判断する。スチュワードが与えられる処罰は8通り。

1)5秒の停止ペナルティ。ドライバーがピットストップを実施する際に、他の作業をせずに5秒間停止しなければならない。10秒間のストップ・アンド・ゴー処分と違い、この処分のためにピットレーンに入る必要はなく、レース終了までにさらなるピットストップを必要としていない場合はピットインしない選択も可能で、この場合はドライバーのレースタイムに5秒が加算される。レースの残り周回数が3周を切っていた場合もレースタイムに5秒を加算する措置が取られる。

2)ドライブスルーペナルティ。コースを離れてピットレーンに入り、停止することなく制限速度でピットレーンを通過してコースに戻る。もしレースの残り周回数が3周を切った時点でドライブスルーペナルティが適用された場合はレースタイムに20秒が加算される。

3)10秒間のストップ・アンド・ゴーペナルティ。ピットボックスに10秒間の停止を求められる処分。ピットボックスに停止中のマシンに対する作業は一切認められない。レースの残り周回数が3周を切った時点で処分が適用と判断された場合はレースタイムに30秒が加算される。

4)タイムペナルティ。チェッカーフラッグが振られた後のレースタイムに加算されるため、通常はドライバーの順位が後退する。当該ドライバーと後続のタイム差が大きい場合は順位に変動がない可能性もある。

5)戒告処分。同一シーズン中に3回の戒告処分を受けたドライバーは次戦で10グリッド降格のペナルティが科される。

上記5つのペナルティに対しては控訴が認められていない。

6)グリッド降格処分。通常であればレース後に下される次戦での降格ペナルティだ。危険運転などで審議対象になり、処分が必要と判断された場合に科せられる。チームはこの処分に対して異議申立てを行うことが可能。

7)リザルトのはく奪処分。問題を起こしたセッションの結果が抹消される。

8)翌戦の出走停止処分。次のレースへの出走を禁じられる最も量刑の重いペナルティだ。

さらに2014年シーズン以降、スチュワードはドライバーのスーパーライセンスに対してペナルティポイントを与えることが可能になる。処分の内容を問わず、ペナルティを受けた時点でポイントが加算される。12点に達すると当該ドライバーのスーパーライセンスが次戦まで停止されるため、実質的に次のレースに出場できない。スーパーライセンスのペナルティポイントは12カ月有効。

【セーフティカー】

読んで字のごとく、セーフティカーはコース上でのマシンの安全性を確保するために導入される。レースを中断するまでには至らないが、事故などで危険性がある場合に導入され、問題に対処している間は終始コース上で引導する。セーフティカー導入中もレース距離に含まれる。セーフティカーがコースを離れ、黄色信号が消え、先頭者がセーフティカーライン(コントロールラインより手前)を通過すると同時にレース再開。豪雨など、路面コンディションによってはセーフティカーが先導してのレーススタートとなることもある。